書評のようなもの

 恋ニ酔ヒ、愛ニ死ス ―「らも 中島らもとの35年」 中島美代子・著 ―

「中島らもが、死んだ」 平行線のままのどうしようもなく暗い話の最中、ふいに電話の向こうの男がそう言った。 電話の相手は、私が19歳の時に出会った私の初めての男。私はその頃、彼に貸す為に借りたサラ金の返済がどうにもならなくなり、全てが親にバレ…

 破滅の物語の終焉 ―「毎日かあさん 4巻 出戻り編」 著・西原理恵子 ―

毎日新聞に連載されている西原家の日常を綴った「毎日かあさん」の1、2巻は、読み終えた後で妹に貸したので今手元に持っていない。 私の末の妹は結婚して子供が2人いる。上が男の子で下が女の子。あんたんちと一緒だから、読んでみたら? と言って手渡し…

 恋する写真

私は高校を卒業してから今に至るまでの自分の写真が、手元にはニ枚しかない。一枚は、以前派遣で働いていた会社を昨年の夏退職する際に、送別会で皆で映したものだ。もう一枚は、昨年の秋、仕事でお客さんが撮ってくれた写真。 大学の時に皆で旅行に行った際…

 ゆっくりとしたサヨナラ ―「猫の神様」東良美季・著― そして「鴨ちゃん」の訃報

私は動物に対して冷たい。これから先もきっと動物と暮らすことは無いだろう。犬や猫が擦り寄ってきても抱きしめることは無い。目を逸らして逃げてしまう。友人達は「どうしてそんなに動物に冷たいの?」と言う。きっと怖いんだろう。縋るような瞳で自分をま…

 お前も私も女という醜悪な怪物だ ―「グロテスク」 桐野夏生―

『娼婦になりたいと思ったことのある女は、大勢いるはずだ。自分に商品価値があるのなら、せめて高いうちに売って金を儲けたいと考える者。性なんて何の意味もないのだということを、自分の肉体で確かめたい者。自分なんかちっぽけでつまらない存在だと卑下…

  痛みと共に生きること ― 「たまもの」 神蔵美子 ―

疲れた時に甘いモノが欲しくなるのと同じで、私は心が弱くなって、自分の中に迷いや恐れが生じた時、つまりは自分を見失いそうになった時に、読みたくなる本とビデオがあります。本当に心が弱ってる時は泣きながら読んだり見たりする。きっとそういう時は、…

  凄まじい片思いの果てにあるものは ―「妖異金瓶梅」 山田風太郎―

「藩金蓮」という、私が使ってる名前は、私が最も敬愛する作家・山田風太郎の「妖異金瓶梅」のヒロインの名前です。正確には、「潘金蓮」なのだけれども、最初、変換する時に出て来なかって、めんどくさいので「藩」のままで通しています。何故、この名前を…

  覚悟のある恋愛 ―「それから」 夏目漱石―

本や映画を見た感想というものは、ごくごく個人的なもので、それは受け手の経験や状況から生じたフィルターを通じて初めて個人の中に伝達される。だから同じ映画や本を見ても、例えばAという人物とBという人物が全く相違の無い感想を持つということは有り…

 「焔」 上村松園

日本画家上村松園の作品で、「焔」と題された絵がある。http://www.tnm.jp/jp/servlet/Con?&pageId=E16&processId=01&col_id=A11098&img_id=C0032486&ref=&Q1=&Q2=&Q3=&Q4=&Q5=&F1=&F2= 謡曲「葵の上」に登場する六条御息所の生霊をイメージして描いたと松園…