あなたとわたしのセックスの話
さてさて、前回の記事の講演が行われている頃、私はどこでどうしていたのかというと、大阪の堂山町で開催されておりました「セックスワーカーのいる街 2008」というイベントに行ってまいりました。
概要はこんな感じです。
◆主催: (財)エイズ予防財団
※このイベントは、平成20年度厚生労働科学研究費エイズ対策研究推進事業・研究成果等普及啓発事業により開催されます。
◆プログラム
☆ 挨拶と研究班の成果発表(東優子)“セックスワークと性の健康”
☆ トークショウ(1)桃河モモコ×要友紀子×タミヤリョウコ “セックスワーカー連帯の過去・現在・未来”は、“セックスワーカー連帯の過去・現在・未来〜私たちが安心して働ける未来はあるのか?!〜”
☆ トークショウ(2)松沢呉一×シモーヌ深雪×桃河モモコ“安心するともっと感じる、ってソレほんと?”
こちらの「せくすばっ」のHPをご覧頂いたらおわかりいただけると思いますが、非常に真面目なイベントです。
普段、ちょこっとだけAVの世界と関わらせて頂いて生きてはいるのですが、同じ性を売るというカテゴリーの中に存在しているセックスワーカーさん達のことに関しては全く無知で、またプライベートでも正直「安全なセックス」などという認識などなく、「妊娠しなきゃいい」ぐらいの程度の危機意識しか持ち合わせていない者なので、こういうイベントが行われていることは全く知りませんでした。
そんな私がどうしてここに来たのかというと、友人のライター田中課長(女性・タミヤリョウコという名前もあります)のお誘いです。もともと田中課長(だからなんで課長やねん、部長や係長もおるんかいな)と知り合ったのは、彼女が女性向けのWEBマガジン「Lovery Pop」の中で「AV嫌いな女性のAV紹介」というコラムを書いておられまして、その関係で偶然、私が以前に書いた「マンコがマンコに恋する理由」(松野ゆい&森下くるみ主演)のレビューを読んで、こちらのサイトを取り上げて下さったんですね。今だから言うけど、この記事を書いた時は、「7〜8割こちらの片思い」みたいな状態の恋愛をしている色ボケ真っ最中で、過剰な思いいれたっぷりの文章になっていてそのあともなんだかんだと自分の思い入れの深さ故に駄目になったような部分があるので読み返すといろいろ複雑な心境なのです。ちったあ学習しろや、ワシ。しかしこの自分語りレビューは、こちらでも取り上げていただいたり、他の方からも言葉を頂いたり、なんか結構反響があったので更に複雑だったりもして。
それはともかく彼女も私も京都在住で、同じ年で同じ頃京都で大学生をやっていたという共通項もあり(大学は違うけど)実際にお逢いしたり、彼女が出演するこのイベントにも足を運んでみたのでした。
私のようなちゃらちゃらとした、「ふだんあんまりセックスしないからいいんだもーん」とか避妊やセーフセックスに対して曖昧な認識しかなく、HIVや性病に対しても意識の低い知識もないヤツがそんな真面目なイベントに行っていいのだろうか・・と思いつつ行ったのですが(だからこそ行くべきなんよね)、非常に、非常に、ひじょぉに、面白かったです。ここで言う「面白い」というのは、笑えるとか、勉強になったとか、そういう意味ではなく(笑ったし勉強にもなったけど)結構カルチャーショックで、感銘を受けたという意味です。
最後の質疑応答で、ついどうしても言いたくて、手を挙げて私も発言してしまったんですが(汗かいたよ)、最初のセックスワーカーに従事している、していた方3人トークショー(1)の際から、私は「AV」のことを考えてちょっと重い気分になっていました。
雑誌の付録についてるDVDやAV情報誌を見ても、最近はこれでもかと言うぐらい中出し当たり前で、勿論口内発射も当たり前、アナルも、激しい指マンでも潮吹きも、うんざりするほど当たり前。裏モノのレビューを読むと、生中出しであるかどうかが「エロいか」の基準のように書いてあるし、実際にそう感じる人も少なくないんだろう、「ゴムをつけると気持ち良くない」と感じる男も、女も。それはわからんことでもないし、私もAVのレビューを書いているので、敢えて「中出し」と、それを取り上げることもあります。
しかし現実のセックスにおいては、特定のパートナーと覚悟を持ってセックスをするという人はいいと思うんだけど、少数であろうが多数であろうか複数の人とセックスをしている人にとっては、そら危険なことなわけですよ。いや、自分は1人のパートナーとしかしないけれども、そのパートナーが複数の人とセックスしている場合もあるわな。
私はPMS対策としてピルを服用しているのでたまに産婦人科に行くんだけど、待合室には若いカップルも多いし、避妊に対してもの凄く曖昧な結果、堕胎する人の数が少なくないのも知っている。今更当たり前ですが、中出ししたら妊娠します。中出ししなくても妊娠する場合もあります。私のようにピルを飲んでたら妊娠はしませんがそれでも病気の予防は出来ません。ほんと、当たり前のことなんですが。
AVを見てると、女優さんが中出しされて、「いっぱい出てるぅ」と嬉しそうにしたりもする。AVってのは、男のオナニーのために作られているものなので、男の攻撃的&受動的な性の幻想を具現化したものであるし、だからレイプをはじめなんでもありで、様々なバリエーションが存在して、面白い。男の性欲なんて攻撃的で支配的なものだから、女性にとって不愉快な物がそこには確かに存在しているから、「AVを嫌い」と女性が言っても(男性でも居ますけど)当然だと思う。
それでも私は昔からAVが好きで、より気持ちのいいオナニーのためにはAVが必要だし、面白くていやらしいモノを見たい。
でも、時折、苦しくなったり、悶々とすることがあります。
その悶々を書いたのが「AVとセックスと混乱と矛盾と」
で、その後、その気持ちがはっきりと形になったのが、あるメーカーが女優を審査し、選び、順位をつけるオーディションを見てからです。
「頑張れなんて、言えない」という記事。
ぶっちゃけ、お話を聞いてて、AVが「セーフセックス」、そして、人と人とのコミュニケーションが存在するセックスの妨げになっているんじゃないかと思いました。
私の友達で、処女なのに激しい指マンをされて、膣が傷ついて病院に運ばれた子もいます。私自身も、他の人から聞いた話でも「それはAVの見すぎやろ!」と言いたくなる、不愉快なプレイを強要されたことがあります。
昨日も、ちょっとそんな「例」も伺いました。女が思うより男の人はAVを見てるし、興味を持って見るのなんて当たり前だと思うし、女性と恋愛したりコミュニケーションをとることをすることをせずにAVを教科書にして実践してしまう男性もいる。AVは教科書じゃない。セックスってのは、実際にやって覚えることだ。
以前、有名大学の学生の集団レイプ事件があった時に、テレビでテリー伊藤さんがこんなことをおっしゃってたんですね。
「どうしてこの子達は、恋愛しないんだろう。恋愛したことがないから、セックスをこういうやり方でしか出来ないんじゃないか」
当たり前なんだけど、自分がされて嫌なことは、人がされても嫌なんだって。レイプ事件のニュースを見る度に思う。レイプ犯なんて、絶対に死刑にならないんだから、こいつら屈強な男達に押さえ込ませて、ローション無しでいきなりケツの穴にでけぇちん○を突っ込んでやりゃあいいんだよ。血が流れようがおかまいなしで。動きを封じ込まれ自分の意思を殺され無理やり性行為を強要されるということの恐怖を味あわせてやればいい。
話がAVに戻ります。上記のあるメーカーの「オーディション」が痛々しくなったのは、「過激なことをする」ために頑張ることがエロいことだと女の子が勘違いをしていることです。「フィストファックできます!」「うんこできます!」「私マゾなんです!」・・・・と、壇上で性器を見せて「エロアピール」する女の子達。感極まって泣く娘達。それを眺めて審査する監督と、AVファン達。
これ、エロですか?
そして出来上がった作品は、ほとんどがSM。
SMは好きです。私も多いにその気があります。だけどあの「エロアピール」する娘達のSM作品を見たいとは思えなかった。他人の手を借りて自虐しているようにしか見えないから。
そういうもやもやしたあれこれを抱えていると、時折AVと縁を切ろうかと思うこともあります。考えすぎですね、わかっています。でもそこで平気になってしまうと、自分の中で「おしまい」になってしまいそうで嫌だ。
AVの弊害って、絶対に存在する。コミュニケーションがとれない人間が増えていく中で、そのことが大きくなっていってるんじゃないかとも思う。自分の欲望だけを押し付けて他人を見ないセックスの方が、そら楽だから。
そんなもやもや〜としたことを考えながら、セックスワーカーの皆さんのお話、そしてその後の松沢呉一さんと、シモーヌ深雪さん、桃河モモコさんとトークショーも引きこまれて聴いていました。ここのトーク、本当に面白かったです。松沢さんの著書は昔から読んでいましたし、やはり知識に裏づけされた話術が人を惹き付けます。
そして、私の「もやもや」や「罪悪感」なのですが、この頃には、なんとなく、形にはならないけれども、自分がAVを見ることと、安全で楽しくセックスを皆がすることの両立って、私が深刻に考えるほど絶望的なものではなく、出来るんじゃないかな、と思えました。そして「性」を書いて関わるのなら、もっと知らないといけないことはたくさんあると思いました。目を瞑らずに見ないといけないことも。
私はセックスが好きで、セックスに関わる様々なことも好きです。セックスで身を落として破滅したこともあるし、傷ついたことは数え切れないぐらいあるけれどセックスが好きです。男という存在はまだ好きになれないけれど好きな男とはセックスしたい。30歳ぐらいまで、私は1人しか男を知らなくて挿入も数えるほどしか出来なかったし(お金を要求されたから)ロクな恋愛を経験してない反動かもしれないけれども自分でもうんざりするぐらいセックスの世界にこだわっています。
普通の職業についてる人達は、あんまり真剣にあからさまにセックスの話なんてしないと思う。しても自慢話程度じゃないかなと思う。だけど性欲はほとんどの人にあることだしセックスだってほとんどの人がする行為なんだから、好きだろうが嫌いだろうがに関わらず性とかセックスって自分にとって何なんだろうってことを、何らかの形で人と真面目に語り合ったり考える場所があった方がいいと思う。ネット上でもいい。堂々と話すことじゃないかもしれないけれど、もしあなたが何か彼氏とのセックスや、自分自身の身体のことでもやもやしているものを持っているのならば、それをそのままにしておかずに、どこかで答えを探したらいいと思う。
世の中には、お金とか、いろんな「資格」が無いと得られない快楽がたくさんあるけれど、セックスって、誰にでも出来る気持ちのいいことなんだから。
* このイベント後に、ある方と遭遇して、私が田中課長の手を握り締め「あんたと出会えて良かったよっ! 今日誘ってくれて本当に感謝してるよっ!」と明らかな不審者となりマジ感涙する出来事があったのですが、その話は、また後日。