人は幸せになるために生まれてきたのです
直木賞作家、劇作家、演出家の、つかこうへいさんが亡くなったというニュースhttp://mainichi.jp/select/wadai/graph/tsuka_kouhei/を聞いたから。
私は舞台を観たことがないので、演出家としての顔は知らないけれど、20代のある時期、夢中になり貪るようにこの方の小説を読んでいました。
つかこうへいの物語の登場人物は、皆、過剰だ。
一歩間違えれば、いや、間違えなくても、キ○ガイだと言われてもしょうがないほどに。
自分の過剰さを持て余し、損得なんて考える賢さなんてなくて(いや、あっても選択を間違える)、ブレーキがなくて、暴走して、事故に遭い怪我して泣いて泣いて人目なんか気にせずに泣きじゃくって。
甘えて暴れて全速力で走り回り、怪我して泣いて、人に見放され傷つけ、愛した相手を痛めつけずに傷つけずにいられない、過剰な人間達。
バカで、キチ○イのように過剰で、愛すべき人たち。
私も、過剰な人間だ。しかも、あんまり賢くない。っつーか、バカだ。明らかに傍から見たら危険区域に突っ走りブレーキが無いので暴走して事故して怪我をする。この年齢になっても、それを繰り返している。あんたが自ら危険区域に突っ込んで行ったんじゃないかと、事故して怪我する私に人が言う。あきれ果てて、うんざりしながら。だから私は自分が母になるのが怖い。鬼子母神になることが目に見えているから。
周りにも、私のような人間は、たくさんいる。いい年して、それを続けている人間にはロクな末路が待っていないというのも見てきた。バカにはもれなくクズが寄ってくるのも見てきた。
バカは死ぬまでバカなのか。それならバカのままで幸せになる方法はないのだろうか――
バカのままで、過剰なままで、幸せを諦めない人間、それを描いていたのが、つかこうへいの作品だった。
きれいごとじゃないところに、一番きれいなものが存在する。それを描いた作家だった。そして、「生きる」ことの壮絶さを描いた作家だった。
一人称で語られるそれらの物語を読んで、この人は泣きながらこの台詞を描いているのではないかと、今更ながら思った。自分のハラワタを抉り出し、憎悪と怒りと哀しみの底にある救い――まるでパンドラの箱に最後に「希望」が残っていたように、それを描いた作家だった。
在日韓国人二世であるつかさんの遺書には、葬式も墓もいらない、日本と韓国の間の対馬海峡辺りに散骨してくれと書いてあったらしい。
62歳。肺がんのことは知っていたけれど、まさか、この人がこの世から去ってしまうなんて思いもよらなかったので、朝ニュースを見た時は、悪い冗談だろ、と思ってしまった。
けれど、作家は死しても「作品」を残す。
魂が込められ、命がけで作られ、人々の心を揺り動かした作品は、色あせず、残り、読み継がれていく。つまりは、その人の魂は、死なないのだ。だから、作家というのは、幸福な人種だ。
私は、まだまだ過剰さがおさまらず、事故をして怪我をしたり、相手にさせたり、バカを繰り返し続けている。
バカは死ぬまで治らないのなら、バカなままで幸せになるために、もう一度、読ませてください、あなたの小説を。
人は、幸せになるために生まれてきたのですから。
その言葉が、本当ならば。
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