琵琶湖周航の歌


 さざ波や 志賀の都は 荒れにしお 昔ながらの山桜かな

 この歌は、「千載集」に、「詠み人知らず」として載っている。実際には平清盛の弟、平忠度都落ちする際に、歌の師である藤原俊成に託した歌である。平家は罪人であるが故に「詠み人知らず」とされた。後に忠度は一の谷の戦いで命を落とす。
 されど、残された歌は、こうして生き続けているのだから、忠度は幸せなのではないだろうか。

 志賀の都、滋賀県、近江の国。日本最大の淡水湖を有するこの国が好きだ。歴史と自然と水がある、美しい国である。語りつくせない魅力に溢れた近江の国に、日曜の早朝より行って来ました。勿論、1人です。(なかなかこんな早朝、付き合ってくれる人はいません)

 7時に大津港出航の船に乗り、滋賀県草津市の烏丸半島へ。ここには琵琶湖博物館水生植物公園みずの森、そして蓮の群生地がある。今回のお目当てはこの蓮で、期間限定の琵琶湖汽船花蓮クルーズに乗船してまいりました。

 「藩金蓮」という名は、mixiをする際にとっさにつけたハンドルネームで、山田風太郎の「妖異金瓶梅」の嫉妬深く極悪淫乱な主人公から拝借したモノです。あくまでこれは一時的なハンドルネームのつもりだったのですが、思いがけずこの名でモノを書いたり定着してしまい、近頃やっと「藩さん」と呼ばれ慣れてきました。ちなみに「金蓮」って纏足のことらしい。
 あくまで借り物の名前なので、エロ以外は「蓮月詠子」という名前を作ったのですが、こちらはまだちょいとなれないけど、じょじょにならしていくよ。

 どちらの名前も「蓮」という文字を使っているのですが、蓮の花は仏教に縁のある花であり(仏様って蓮華座におられるでしょ?)、泥の中より美しい花を咲かせるというその性質が、好きなのです。
 綺麗な水と綺麗な土に咲く花よりも、芥と塵に汚れた泥の中から清廉に咲き出でる花の方が、私は美しいと思う。
 
 私は綺麗な生き方をしてきた方ではない。愚かで醜く汚い、決して褒められない生き方をしてきた。だから、一点の曇りもない、優等生的な生き方をしてきた人などに対峙すると、卑屈になるか、露悪的になり自分を貶めてしまうことがある。ごめんね、汚くてって。綺麗事しか言わない人に正論を吐かれると、憎んでしまいそうになる。ごめんね、わたし、あなたのように、ただしいことが言えないのって。ねぇ、おんなのこはね、きよらかで穢れを知らぬ天使の方ような方がいいよね、私は未だ、たまに、得体の知れぬモノのように、怖がられることがあるから。
 生まれ変わるなら、2度と同じ人生は御免、だ。
 

 だけどそうは言っても、生きていかねばならぬ。まだ、死ねないから。出来るならば、蓮の花のように生きていきたい。綺麗な水、綺麗な土、太陽の光を浴びて咲く花にはなれないけれど、汚濁に塗れた泥の中より咲き出でる蓮のように。

 
 さて、琵琶湖を渡る船は快適で気持ち良過ぎる。風が心地よく、比良山脈も比叡山も、畔に聳える大津プリンスホテルも絶景かな。
 烏丸半島上陸の時間が一時間しか無かったので駆け足になりましたが、群生している蓮、そして植物公園内の世界各国の蓮も見事でした。蓮のソフトクリームも食べたかったが時間切れで残念・・・
 さすがシーズンで人が多かったんですが、例えば夜に、この蓮の群生を見ると、極楽浄土が味わえそう。

 花が好きです。
 花を見に行きたい。

 今年の夏は去年より、忙しくて遠くにいけなくて、時間に心がついていけなくて、あたふたと焦ったり脅えたり怖がったり。
 だからこそ花が欲しい、花が。


 琵琶湖汽船花蓮クルーズ」今週末の土日もやってます。
 その他、琵琶湖汽船様々な楽しいプランがございますので、是非どうぞ。

 近江の風は私に優しい。
 船の上にて口ずさむ歌は、「琵琶湖周航の歌」。
 比叡山ドライブウェイから琵琶湖を眺めながら聴く加藤登紀子の歌声は、安らかなる子守唄のように、人に優しい。

 志賀の都よ、いざさらば。



 私は、花にはなれないけれど、花を喰うて、生きていく。