自分を殺さないために 前編


 エロ子さん(三十代後半未婚・社長秘所兼バスガイド)は、先日、生まれて初めて「婦人科」に行ってまいりました。これより、ちょっと、真面目な話です。

 病院嫌いのエロ子さんが、婦人科に足を踏み入れたのは、「PMS」を何とかしたいという理由です。「PMS」とは、何か。月経前症候群のことです。簡単に言うと、「生理前のイライラ鬱々」ですが、詳しくはこちらをどうぞ→http://homepage2.nifty.com/maika_/pms/index.htm

 PMSの症状は人によってそれぞれで、全くそういう不調が無いという人もいます。イライラ鬱々の他にもいろんな症状があって、ムクミとか、便秘とか、吹き出物とか、食欲増進とか。私はあと、肌が敏感になり痒い物が出やすくなる。とにかく心と身体のあちこちに何らかの不調が出ます。人によりけりだけど、私はいざ生理が来ると、サーっとそれらの不調が全部おもいろいぐらい引きます。

 そもそも「PMS」なんて言葉は数年前まで知りませんでした。友人が生理前の不調に悩まされ、婦人科に行ったことから、その言葉を知りました。
 私も多少は生理前のイライラはあったけど、生理が始まったら終わるんだしなぁとあんまり深く考えておりませんでした。ってのは、20代の頃などは、それで無くても常にイライラ鬱々して「死にたい」と朝から晩まで考えて生きてきたので、特に生理前がどうのこうのって考えてなかったと思います。

 でも、不味いことに、この時期は感情をコントロールしずらくて、人にあたってしまったりするのですね。しかも親しい人に。例えば恋人とか。甘えなんでしょうけど。当たったりとまでは行かなくても、ちょっとしたことで鬱屈したモノが爆発してしまって、他人から見たら「そんな些細なこと」で泣いてしまったりする。
 しかし当時は「PMS」という言葉を知らなかったし、インターネットもしてなかったから知識も無かったし、そんな当たり前の「生理現象」を「自分が我慢する」以外の方法で何とかしようとか思ったこともありませんでした。

 でも、生理前の不調というのは、やっぱりほっといたらいけんのです。生理痛だって、「生理ん時にお腹が痛いのは当たり前」と思って我慢してたら、子宮内膜症になっていたとか、そういう人が周りに何人か居ます。妙に自分の体力や精神力の強さに自信がある友人は、ガッツで(そんなガッツいらんのに)生理痛我慢し続けて、バファリンとかでごまかしてたら、仕事中に運ばれて手術しするハメになりました。この時は、私も気をつけなと思いました。私も体力に妙に自信があるので、倒れるまで無茶をしてしまうことがあるから。
 婦人器系の何らかの病気を持っている人は、実はたくさんいます。そして、「不妊」の人も、ホントにたくさん。だけどいざ結婚したら子供作れだの、お前はまだかだの攻撃する「無知」な人は世に尽くまじ。

 友達から「PMS」でピルを飲み始めたという話を聞いて、へぇーと思いました。それまでピルは避妊薬としか認識してなかったんです。男性の知人からも「彼女がPMSが酷いからピル飲んでる」と聞きました。それでも私の中に「ピルは避妊薬」という認識が強く、日常であまり性行為をしないから、(当時遠距離恋愛中)ピル飲むのは、お金が勿体ないしなーとしか思ってませんでした。

 2年前、京都に復帰するまで数年派遣社員として勤めていた地元のメーカーの同僚で、40歳3人の子持ちのAさんという女性がおりました。どう見ても40歳3人の子持ちには見えない若々しくて生き生きしてた人だったけれど。彼女は、正直で真面目な人で(これって友達の必須条件)、仕事の合間にいろんな話をしてたんですが、彼女が私に婦人体温計を勧めてくれたのです。それがこれ→http://www.kenko.com/product/item/itm_7031167072.html、今ネットで見たら、私はドラッグストアで五千円近くで買ったけど、ここで買うと安いわ・・・当時、五千円で婦人体温計を買うというのは、クソ貧乏な私にとっては相当勇気がいる冒険やったのに・・・

 この婦人体温計は、毎朝決まった時間にアラームが鳴ります(目覚まし時計よん)。そして口に咥えて検温。生理が来たら生理日をインプットすると、前回の生理が始まってから、今は何日目だということが表示されております。通常の体温の時期と、高温期(つまりはイライラ期)がグラフでわかる。高温期が何日か続くと、そろそろ生理が来るぞーって準備を始めて、高温期が続いて、ある日どしんと体温が下がると、その日に99%生理が来ます。これは便利。朝、検温して「今日体温いきなり下がったから生理が来るわっ!」って生理用品を用意することが出来る。露骨な言い方をすれば、その日はもう下着にナプキンをつけておくと、「いやん、いきなり来ちゃったから、パンツが汚れちゃったん」ってな悲劇も起こらない。

 そして何ヶ月かのバイオリズムを記録しているので、「今、妊娠しやすいよーん」って表示も出るのです。それを見ながら毎月、「いや、そんな機会ないから!」って、虚しいツッコミを婦人体温計にしてるのですが、それは置いといて。セックスをした日もインプットすると、体温のバイオリズムのデータから「あんた、もしかしたら妊娠してるかも知れないわよっ!!」ってな表示も出ます。

 Aさんも実はピル服用者ですが、「自分の身体のことを知る為に。あと、単純に面白い」と、この婦人体温計を勧めてくれたのですが、使用してみると、「うわぁっ! ホンマに女の身体って面白れぇっ!!」って思いましたね。毎日の体温を測るだけで、「あんた今日、生理来るわよっ!」「あんた今妊娠しやすいわよっ!」「あんたそろそろイライラ鬱々期だわよっ!」とか、全て教えてくれて、それが全てドンピシャなのが面白い。「私の中の女性ホルモン」の存在を自覚しましたね、この基礎体温を測り始めてから。すげぇーっ、女の身体って面白れぇーと思ったし、何て自分は女性ホルモンに左右されているんだろうと。なんにしろ、飽き性の私が未だにこの婦人体温計を毎朝愛用していて、「あんた、今日生理来るから準備しときなさいっ!」って、体温計ちゃんが教えてくれた日に、きちんとホンマに生理が来るのが嬉しい。
 

 そうして婦人体温計で自分が今、「イライラ鬱々期」であることを自覚すると、なんだか随分楽になったのです。イライラ鬱々辛いけど、でも期間限定だし、原因もはっきりしてるから気に病むことは無い、と。

 そう自覚すると「PMS」の時期も、「ここ数日我慢しととったらええだけじゃー」とやり過ごせるので、放っておいたわけです。

 でもね、ところがどっこい。
 
 私は2年前に実家を出て京都に来て、穏やかな日々(?)を過ごしていたのです。何よりも京都に戻ることが目標だったから、それですごく幸せだと思ったし。とことが、この2年間、2度ほど、酷い鬱状態になってしまったことがありました。いずれも一週間ほどの期間だったけれども、頭の中に「死にたい」という言葉がぐるぐると廻ってて怖かったし苦しくてたまらなかった。

 私は元々ネガティブで感情の起伏が激しい分、落ち込みも酷い。そして、第3者から「傷つき易い人」とよく言われます。些細なことを気にし過ぎだとも。私は自分のことを「暗い人」だと思います。きっと周りは誰もそう思っていないだろうけど、普段の「私」の顔ではなく、心の中に、救いがたい暗い部分があります。絶望なのか、何なのか。それは私だけが知ることです。だからお酒を、あまり飲みません。酔って憂さを晴らすとか、酒に逃げるとかよく聞きますが、私は泥酔するとどうしようもなく落ち込んでしまうのです。絶望する。だから、酒に逃げられない。絶望して落ち込むのが怖いから酔わないようにしてるのです。酒飲んで酔ってハラヒレハラ〜になってる人を見ると羨ましいと思うし、時には憎くなります。だから、酔っ払いが大嫌いで、酔っ払いのいる場所には近づかない。「お付き合い」の飲み会が死ぬほど嫌い。そういう場に仕事上どうしても行かないといけないことが(つーか、そういう酔客相手にするのも仕事のうち)ものすんごいストレス。
 なんで皆、あんなに楽しそうに酔えるんだろう。親しい人と酔わずに、ふんわりした気分になる程度のお酒は好きですけれども、酔って我を無くすということは鬱状態になることなので怖いのです。

 話を戻して、ここ2年の鬱状態のお話です。
 1度目は、夏に京都に戻り働きだして、秋にバスガイド仕事がすんげぇ忙しかった時です。体力的にもボロボロだったけれども、自分のそれまでの考えの甘さを思い知らされたり、人に怒られたり、自分には何の心当たりも無いのにキツく当たられたりとか、仕事の対する自信をほぼ消失してしまって、それでも休み無しで「笑顔」で働かねばいけなかったこの時期、1人になってホっとする時間も持てず(朝から晩まで先輩と同じで、寝るのも同じ部屋で気を使うしね)で、久々に「死にたい」と思ってしまいました。だけど、死にたかろうが仕事は目の前に次々と現れて、気がつけば観光シーズンは落ち着いてて、その時には「鬱」は終わっておりました。とりあえず、だけど。いろいろ問題は悩みは抱えたままだったけど、「死にたくて死にたくてたまらなくて自分には死ぬことしか選択肢が無い」と思う時期は終わってました。


 2度目は、わりと最近の話です。今年に入ってから、ある人と電話で喋ってて、途中で何でか話が妙な方向に行って、私がその人に攻められ始めた。その時は、「攻める」とか「攻められる」とか自覚はなくて、普通に喋ってたつもりなんだけど。その折に、自分の心の中の「一番痛い部分」、つまりは怪我をしてる箇所を、集中的に攻撃されたのです。向こうは攻撃してる自覚は無く、私のため(?)の意見を言ったつもりなんだろうし、その時は私もそういうふうに捕らえてはいたものも、いつのまにか激昂されて傷口に針を刺されているような会話になり、私も反論せず言われるがままだったのです。そして電話を切った後、目の前が真っ暗になって、さっき言われた言葉が頭を支配し始め鬱状態に陥りました。

 私は、自分の意見を人の話を聞かずに繰り広げる人に対して反論できない。昔、初めての男との関係もそうでした。相手が偉い年上なのもあったんだけど、自分の価値観が絶対的なものであると思い込んでいる人で、少しでも反論しようものなら、「お前はおかしいよ」と人格否定されるし、あげくの果てには「お前は狂ってる」とも言われたし、今ならその男がそうして他者を否定することは、自分の身を守る為だったと分かるのだけれども、当時の私は失語症のようでした。口を開いても言葉が出てこなくなった。自分が思うことを言うと、即座に否定されることが見えてしまうから、口を開いてパクパク動かしてみるのだけれども、言葉が出なくなった。何も言わなくなり、ただ恨みがましい目をするだけの私に、その男は、「すぐ黙り込むお前は卑怯だ」といつも言っていた。今思うと、口を開いて動かして言葉が発せられないって、病的な状態だったとしか言いようがない。自分は絶対者だと信じることで自分の身を守る人間とは議論も会話も出来ない。

 昔のことはさておき。って、こうしていつまでも昔の男ネタを出すのは食傷されるのはわかってんだけど、やっぱり自分の中の苦しみや絶望の根っこにあるのは、この男との関係なのねん。もっと書けない、酷いことはたくさんあったのよん。

 ほんで2度目の鬱状態の話に戻ります。(この時にやりとりしてた相手は上記の初めての男じゃないです)この後、久々に朝から晩まで「死にたい」と頭の中で唱える状態が始まりました。「死にたい」と、「殺したい」かな。私は死にたいし、私が憎む人間、私をバカにしてる人間を殺したい、と。でも、私は死ねなかった。死にたくて死にたくてしょうがなかったけれども、死ねない理由があった。私が死ぬと悲しむ人がいるから、死ねない。でも死にたいという言葉が頭の中を朝から晩までぐるぐる廻ってて、それでも会社では普通の顔して仕事をしないといけないかった。そういう状態が一週間続きました。そして私は、その相手を攻撃せずにはいられなかった。心中してやろうかと思っていたのかもしれない。私をこんな目に合わせて地獄に落とした、私を殺そうとしているこの人が、幸せになるのが許せない、と。私を殺して、私のことを「弱い人間」だと嘲笑するのが許せないと、私は言葉で相手を必死に攻撃した。自慢やないが、どんな人を罵る汚い言葉だって平気で使える。

 しかしその問題は、その人の謝罪などで解決して、一日中「死」が頭の中をぐるぐる廻るという状態からは脱したのですが、「言葉」は残り、今でもそれに囚われて頭の中が白くなることがあります。
 でも、その状態から私を救ったのは、別の人の「言葉」だったから、「言葉は人を傷つける武器」でもあるし「人を救う仏の手」でもあるのです。
 言葉にすること、されることにより、アタマの中にあった抽象的な概念が完成されちゃうってこともある。


 わたくしのお仕事も、言葉一つでお客さんの気持ちや見方を左右することが出来る。悪く言えば、コントロールで来ちゃうわけです。だから慎重に、そして謙虚になれねば人を殺し、その報いを受ける。


 その1度目の鬱も、2度目の鬱も、多分PMSの時期だったのです。PMSの時期って、1ヶ月の3分の1がそうだから(私は)そんなこともありうるわけです。多分、PMSで、通常より精神的に弱って傷口も広がっていったんだろうと思う。PMSの時期じゃなかったら、そこまで鬱状態にならなかったんじゃないかな、とも少し思います。

 ただ、2度目の鬱の時に、「ヤバい」って初めて危機を感じました。何がヤバいのかと言うと、「こういう時に、人間は何かほんのちょっとのことがきっかけで自殺してしまうんだ」と。私はPMSの時期は、全て悪い方向に考えてしまいそうになります。ありえないほどネガティブです。PMSの症状は、ホント波があるから、全然元気で平気な時もあるけれど、たまに症状が酷い時があって、その時に傷口に楔を打ち付けられたりしたら衝動的に自殺してもおかしくないなと思いました。

 症状が酷い時は、誰かのほんのちょっとした「言葉」が絶望の背を押して、衝動的に駅のホームに飛び込んでも何ら不思議ではないと思ったのです。PMSの時期は、とにかく気分が落ち込み勝ちで発想が後ろ向きだから、その時に、「ほんの些細なきっかけ」で、衝動的にビルから落ちても不思議ではないと思いました。

 だから、「こりゃヤバい」と思ったのです。PMSの時期に、今よりもっと心が弱って絶望してて、その時に、何かのきっかけで死を選ぶことは、ありえる、と。

 私は普段、生きていこう生きていこうとはしているし、幸せになるためにはとりあえず生き続けないとと思ってはいるのだけれども、何らかのきっかけで、「もう生きていくのが辛い」と死を乞うることも充分ある。
 
 と、いうわけで、PMS対策を真剣に考え始めたのでした。
 「自殺」を防ぐために、自分の。




 とりあえず、長くなりすぎたので、後はまた後日。