プロポーズは突然に

 プロポーズ、それは女の子の夢。プロポーズ、いつの日か素敵な王子様が薔薇の花束を抱えて私に告げるの「僕と、結婚してくれませんか?」って、、、プロポーズ・女の子なら誰もが夢見るプロポーズ・ルルルルルルー・・・プロポーズ・こんなん書いてて尻がかゆくなるわいな、だって関西人なんだもの・・・・・夢のプロポーズ・・・ルルルルルーん・・・・



 数年前の話。ゲイの友人Tくんとお茶を飲んでいた。最近どうですかーみたいないつものような雑談をしていた時、いきなりTくんが私に言った。


 「偽装結婚しましょう!」


 って、、、、ルルルルル―、それは突然のプロポーズ・・・・


「な、なんで急に偽装結婚したいんですか? あなたは結婚制度そのものを否定してたじゃないですか?」


「なんかねーめんどくさくなってきたんですよ。職場とかで、なんで結婚しないの? とか、早く結婚しなさいとか言われんの鬱陶しくないですか? その度にいちいち、したくない理由とか説明するのもめんどくさいし。」

 ああ、それはわかるよ。私もめんどくさい。職場や親戚に、向こうはそんなに意味なく挨拶代わりに言ってんのかも知れないけど、したくない理由とか言っても通じないこと多いし、ものすごくめんどくさい。したくない理由とか言っても、相手がいないとか、したくないからしないっつっても、納得してもらえないんだよなぁ。別に一生結婚しないとか決めてるわけじゃないんだけど。で、したいと思わないと言うと、もの凄くビックリされる時があって、こっちがビックリするっちゅうねん。したくても相手がいないんですよーって言えば納得してくれんのか。でも下手にそういう社交辞令言うと、じゃあ相手を紹介するよって言われちゃってそれも面倒くさい。ああ〜なにもかもがめんどくさい〜めんどくさい〜めんどくさい〜♪  



 そういえば以前職探ししてた時に面接行った会社でネチネチと「女の人は、いきなり結婚するとか子供できたとか言って辞めちゃうからねぇ、今しないって言っても、わかんないでしょ? 」とか延々言われて、じゃあ最初から面接したり求人出すなよってキレそうになったよ。



 なんだかなぁ。知人とかにバッタリ会うと「結婚は? 」って聞かれて、してないって言うと、早くした方がいいとか言われるのもうざいんだよなぁ。社交辞令だなと思いはするけど、めんどくさいんだよなぁ。たまに説教モードに入って老後どないすんねんみたいなこと言ってくる人もいるし。どない言われても、どないもせんっちゅうねん。



 いや、したくても相手いないんでーすって言ったら向こうも納得するんだろうけど、したいと思わない、興味がないって言い方するから、なんでしたいと思わないの! なんで興味がないのっ! って言われちゃうんだろう。「女は結婚したいもんだ」「子供欲しがるもんだ」って価値観がまだまだ蔓延ってるんだよ。年配の方々は特に。若い人でもいるけど。ちなみにうちの親なんかモロそうだ。でもまず相手ありきの話やと思うんやけどなぁ。

 そうして私は得体の知れない変な扱い難い理屈こき娘としてどこか疎外されてる。親からしたら男に貢いで借金作るくせに結婚に興味がないとかぬかすしエロ本やらエロビやら小難しい本やらを部屋に置いてる30過ぎたやたら口が達者で行動的で一人であちこち行ってる娘なんてホンマ得体が知れないだろう。うちの親も親戚も皆保守的なんでね。従兄弟もほとんど早くに結婚してるし。うちの一番下の妹は子持ちだし、すぐ下の妹は独身だけど頑張って見合いしまくってるし。私は思い切り異端児なのだ。



 で、もしも一生結婚しなくて老後寂しくなったら、Tくんや、Tくん以外のゲイや、独身友達、結婚はしたけど離婚した人とかと、同じアパートに住んで、独身者同士プライベートな空間を保ちながら助け合って行こうかとか話していたことがある。
 どうせ私達が老人になる頃には日本の離婚率ももっと上がって独身だらけだと思うので独身同士楽しく暮らせばいいじゃないかと思うのだが。それに仕事で老人ホーム行った時とかに話聞くけど結婚して子供生んだから老後寂しくないってことは、絶対にない。


 だいたい結婚結婚言うけれども、これだけ周りに離婚経験者や、既婚者でも結婚生活うまくいっていない人たくさんいるのにそれでも「結婚しないといけない」という人の種は尽くまじ。


 しかし、バリバリのゲイのTくん(女性経験皆無)と偽装結婚・・・・これは、おもしろいんじゃないか、、、ウケそう、、、、



 ああ我は悲しき関西人。ウケてこそなんぼ。ウケる為なら無茶もする。(関西人が、皆そうじゃありません)ああ我は根っからのサービス業根性。(←ちょっと違う)



 そうだよ、私は「危険物取扱者」(丙種だけど)の資格を取得したんだよ。本当はガソリンとか扱える資格なんだけどバスの中でマイク持って「今日のお客様方は、なにやら危険な魅力の、みのもんたの言葉を借りるならお嬢様方ばかりとお見受けします。でもご安心下さい。わたくし、危険物取扱者の資格を持っておりますので皆様を取り扱うことができます」と、ただ、それを言いたいがために、問題集買って勉強したんだよっ。試験の前日苦手な科学の問題とか解きながら「何してんだろ、、、、私、、、、」って泣きそうになったよ。アホちゃうか、わし、、、、って、、、、。(アホです)

 で、以前いた会社のギャル達に「これで君の危険な魅力を取り扱えるよ」って言いながらセクハラする為に、この資格をとったようなもんだよ。アホやな、ほんま。



 と、まあ、ウケるかなぁとか思いつつT君からのプロポーズを受諾したわけだが、いくらなんでも友達たちは止めてくれるだろうから、冗談になるだろうと思ってたのだ。ウケ狙いで結婚するなとか、結婚をおもちゃにするなとか。で、一応共通の友達には、このプロポーズの話をしたのだが、、、、


「おめでとう!」

「よかったやん!祝福するで!」


 と、意外なことに友達たちは皆大喜びなのだ。
 ちょっと、まてよ。君達は自分の友達がゲイと偽装結婚することに反対はしないのかい? 止めないのかい? 結婚は好きな男の人とするもんだよ! とか言わないのかい?


 友達たち曰く、

「あんたは普通に結婚したら離婚するから。」(←失礼な)

「周りに偽装結婚してる人いなくておもしろいから。」

「退屈だから、なんかおもしろいことしでかして欲しい。」

 おもしろいからって、、、、人の結婚を娯楽にしやがる気かよ、、、、、。
 でも、あれだね。結局友達っていうのは価値観が同じであったりするから友達なんだ。で、私と、私の友達たちの共通の価値観っていうのが、きっとこれなんだね。↓


「おもしろければ、なんでもあり。おもしろければ、道徳も倫理も道理も常識も関係ない。おもしろいことに一番の価値をおく」


 おもしろき こともなき世を おもしろく


、、、って、高杉晋作が言う「おもしろい」っていうのは、人生において大儀を成せって意味であって、ウケを狙えとかアホなことしろとか、そういう意味じゃないっちゅうねん。

 なんだかんだ言って彼とは10年来の友達だし、最初から恋愛感情が無い相手なら、いつか恋が終わる恐怖に脅えることもないし、T君とこは親戚付き合いもないし、父親は失踪してるし母親とは面識がある。っていうか彼の母親の自己破産の相談乗ったのは私だ。なんか友達とかが金融関係の相談は私にしてくるんだよな。自己破産とか債務整理とか。そういう相談される女ってのもどうかと思うけど。

 んで友達はなんだか皆祝福するし、結婚しちゃえば、「なんで結婚しないの」とか言われなくて済むし、ウケるし、おもしろそうだしとか思ったわけです。じゃあ本当に結婚しちゃえっ! って決めました。謹んで、プロポーズをお受けいたします!



 もし普通に結婚することがあれば式も披露宴も冗談じゃねぇよって思っていたのだが、バレバレ(友人達に)の偽装結婚なら、どうせならもっとアホアホイベントにしたてあげて派手な結婚パーティーとかしようと思った。ド派手なドレス着て、T君と「男根讃歌」歌うとか(T君はプロではないが、たまにステージに立ち歌う人なのだ)、親戚がサーカスやってる友達に頼んでライオンやキリンや虎とか象とか調達してもらって芸をしてもらうとか、象に乗って登場するとか(ちなみにその友人は自分の花嫁はライオンの背に乗って火の輪くぐりさせるとか言ってた)昔の職場のふんどし姿で全国廻りしている人に踊ってもらうとか、女友達全員にバニーガールの格好してもらうとか(一人そういうノリが好きそうな女がいる)、お姉系のゲイ達にウエディングドレス着て歌ってもらうとか、気に入らないヤツ呼んで、そいつらの食事に下剤混入してトイレを封鎖して苦しみのたうちまわる姿を見て喜ぶとか(昔やって遊んだ)、、、全部実現したら豪華だな。



 アホみたいだし、くだらねーと思うんだけど、アホみたいでくだらないことって楽しい。バカバカしいことほど楽しい。こうなったら戸籍を使ってふざけてやろうか。

 と、いうわけで、さっさと結婚しちゃえって思って次にT君と会った時に偽装結婚の話を具体的に進めようとしたのだ。ちなみに別居、別経済という点では既に合意していた。偽装結婚だから。婚外恋愛もやり放題。偽装結婚だから。家事もしない。偽装結婚だから。結婚後も仕事は続ける。偽装結婚だから。
 ところが彼はこう言ったのですよ。


「えー今すぐにはしませんよー。親になんて言うんですかー」

「あなたは見かけはとりあえず普通の男なんだから、スーツ着て、お嬢さんを僕に下さいってうちに来て挨拶してくれたら済むことなんですよ! で、後は入籍しちゃえば終わりっ!」

「そんなこと笑えてできません!」

「私は世間体の為に結婚したいんですから、そういうちゃんとした手順ふんでもらわないと意味ないんですよ! 私やって、笑えるけど! でも笑いを我慢して、うちの親に挨拶してくださいよ!」

「できません!」

「ほな、いつ結婚するんですか!」

「う〜ん、40歳ぐらいかな。」


 40歳って、、、、、、そんな先のこと知るか!

 とか言いながらも「40歳になったら偽装結婚する」という話で落ち着いた。なんか、そんな先の約束、意味ないんだけど、、、、まあアホなおもしろイベントを一つ企画したと思えば、いいか。


 でもね、結婚したい理由は、もう一つあるのだ。独身でも男と住んだり子ども生んだりはできるけど、ただ一つできないことがある。それをしたいのだ。アレを。結婚して、人妻になって、、、、



「奥さん、、、、なんや、旦那とはしてへんのかいな、、、」

「してへん、、、そんなこと、、ずっとしてへんねん、、、、」

「奥さん、まだ新婚さんやないか、もう旦那にほってかれてんのか、、?」

「ああ、、、旦那は、ホモなのぉ、、、、」

「奥さん、あんた、それで満足しとるんかぁ、女を抱けん旦那で、、、」

「ええねん、うちは奥さんって呼ばれる為だけに、結婚したんやから、、そんなアホな女やねん、、、」

「奥さん、こんないやらしいアホな奥さん、始めてやぁ、、、どうれ、足を開いて見せてみいやぁ、、」

「ああああああああアカン、、、、恥ずかしい、、、、」

「奥さんっ! 奥さんっ! 奥さーーーんっ!」

 、、、、、、って。これは独身ではできないでしょ? 人妻になったら、やはりこれをやらなアカンでしょ。基本です。そういうわけで、と、いうか、もうなんだかわけわかんないままだけど、だいたい40歳になったときのことなんか知らねーけど、おもしろそうだし、女と生まれたからには一度は「奥さん、、、」ってやられたいよねぇ。


 ま、そういうわけで、

 私!結婚します!


 40歳になったら偽装結婚しますっ!、、、、パーティには皆来て下さい! って、その時は宣言したんですけどね。

 
 

 ところが、この数ヵ月後のことです「私達、いつ結婚するんですか?」って聞いたら、、


「えっ?? 嫌ですよ。結婚なんかしたくないです」


 って。


 すてき


 そうだ、、、彼は異常な鳥頭だったのでした。5分前に自分が言ったこと忘れる人やった、、、、


  
 そんなわけで、婚約は解消されましたので、お姉さん現在36歳、結婚の予定は全くございません。


 偽装結婚したかったなぁ、、、おもしろそうだから、、、