素人公開羞恥現場
「お願い、、、トイレに行かせて、、、もう我慢できないの、、、。」
こみ上げる尿意が限界に近づいたのか、女はうずくまり股間を手で押さえる。朝、時間をかけてセットしたであろう髪形は無残に崩れ、汗で頬にへばりつく。女の肩は小刻みに震え、目には涙が浮かんでいた。
「ほぉ、、あんたみたいな綺麗で気取った奥さんでも、小便は我慢できまへんのやなぁ、、、。」
男は薄ら笑いを浮かべながらゴクリと唾を飲み込む。女は周りも見渡すが、そこは密室で出口が無い。見知らぬ大勢の人間達が、その部屋で好奇心に満ちた眼で、尿意に震える女を眺めている。
「奥さん、遠慮せんと、シャーッと小便したらええんやで、あんたが普段相手にせんような、ワシ等庶民の目の前でやってみたらええんやで、何ならワシが、その高そうな下着脱がしたろうか?」
女の顔はもう蒼白で、男の言葉も頭に入らない。ただ、ひたすらイタリア製のパンティを引っ張り挙げ、尿意と戦っていた。こんなところで、こんな目に合うなんて、、、
そのうち女の我慢も限界に達した。目から涙がこぼれ落ち、笑う観客や、男の姿も視界から消えた。
「いやぁーーーーっ!出ちゃうーーーーーっ!見ないでーーーーーっ!」
排泄を顔色が変わるほど我慢した人を見たことがありますか。勿論そういう趣味の人とかは、何度も見たことがあるだろうけれども。正真正銘の素人が尿意と必死に戦っている姿を私は何度も見たことがある。いいでしょ。嘘、よくない。 素人公開羞恥の現場は、いつも高速道路の渋滞中のバス車内である。ホント、困るんだ。高速道路の渋滞は。で、高速道路の渋滞って、結構しょっちゅうあることなので、いつも朝の車内での挨拶では、「いつ渋滞になるかわかりませんので、バスに乗る前に必ずトイレに行っておいてくださいね。」と言う。しつこく下車説明の度に、「次のトイレ休憩までは順調に行けば1時間半ほどですが、いつ渋滞があるかわかりませんので、トイレは絶対に行っておいてください。」と毎回言う。
元々トイレの近い人とか、小さい子供連れの人とか、バス慣れしてる人とかは、人一倍気をつけてマメにトイレに行くし、水分も控えめにしてくれるので、そんな困った事態にはならない。
やっかいなのは、こちらの注意事項を全く聞かない人、バス慣れしていない人、道路渋滞なんて滅多にないだろうから大丈夫と思い込んでる人達である。このトイレ問題には何度も焦らされたし、実際に漏らされたこともある。トイレ付きのバスもあるが、格安バスツアーなどではそんなに使われないし、男の人はどこでも出来るのだが、女の人はそうはいかない。自家用車なら、高速道路を路肩に止めて車の影に隠れてという手もあるが、大型バスとなると皆に見られてしまうわけで、それは出来ない。どうしてもバスを止められないような状況ってのは、あるんでね。
ある日の格安バスツアーに、エライ場違いなお客さんがいた。友人らしき人と一緒に来たその女性は、30代で、美人ではないが背が高く、細身でカジュアルだが高そうな服を着て、よく手入れされた爪が目立っていた。なんか「VERY」とか読んで、三浦りさこさんみたいな素敵な生き方したいの!とか思ってそうな(←偏見)セレブとまではいかないが、プチセレブ奥さんといったところか。格安バスツアーのお客さんって、ホンマ庶民的なおじさん、おばさんが主なので、その女性は少し浮いていた。で、私が場違いだなと思ったのは、その身なりもさることながら、珍しいぐらいツンケンとしていたからだ。私が「おはようございます、よろしくお願いします」と挨拶しても完全無視。ニコリともしない。一瞥すらしない。バス車内では一番後ろの席なので、前から良く見えるが、私が朝の挨拶や注意事項や案内しても全く聞こうとせず、友人とばかりお話になっていた。で、こちらはお客さまには、笑って、喜んで、楽しい旅をしていただきたいと基本的に思って、あれやこれやとしているわけで、はっきり言って、気分がよろしくない。でも、いろんなお客さんがいるし、そう気にはしなかった。そんなこといちいち気にしてたら仕事になんないしよ。で、やっぱり私の話を徹底的に聞く気がないらしく、バスの集合時間には毎回優雅に遅れてこられた。勿論平気そうに、ツンツンなさって。
最終下車地に着いたときに、「ここを出発してから次のトイレ休憩のサービスエリアまで時間かかりますので、必ずトイレには行っておいて下さい。」と念を押した。そしてバスの出発時間、プチセレブ奥様は、ゆっくりと買い物をなさったのか、10分近く遅れてこられた。謝りもせずに。バスは一般道から高速道路に入った。最終下車地を出発してしばらくすると、「高速道路渋滞○○キロ」の表示が出ていた。かなり念を押してトイレのことを言っておいて良かったと思った。まあ渋滞しても2時間ぐらいなら皆我慢できるだろうと思っていた。そして渋滞。バスは旧社会党の牛歩戦術以上にスピードを落とした。予想以上に渋滞は長いので、次のインターチェンジで高速道路を降りた方が早いかなと運転手さんと話をしていた。念のため、お客さんに「トイレしたい方おられますか?」と聞くと、一番後ろの席で、プチセレブ奥様が手をあげるではないか。
そういえば、奥様さっきずっと買い物なさっていて、出発前にトイレにいっている様子なかったな、朝からしつこくトイレトイレと言っている私の話も聞いている様子なかったし、、、奥様に、「高速道路降りて、トイレ探しますから、もう少し我慢してください。」と声をかけたが、その次のインターチェンジまでがなかなかだった。奥様はうつむいておとなしくしていた。なんとか高速を降りたが、そこはド田舎で田んぼしかない。男なら立ちションできるけど、なんたってプチセレブな奥様である。時間が遅いのでドライブインも閉まっていた。
「大丈夫ですか?我慢できますか?」と私が聞くと、奥様は蒼白な顔で、首を振った。運転手さんと焦りながらバスを走らせると、ようやくガソリンスタンドを見つけた。道端にバスを止めると、私と奥様は他の客に見守られながら走った。奥様は股間を押さえていた。「すいません!トイレ貸してください!」と私がガソリンスタンドの人に頼むより早く奥様はトイレにかけこんだ。危機一髪。排尿を終えた奥様は、他の乗客の暖かい目に迎えられて、バスの一番うしろの席に戻っていった。奥様は見知らぬ人達の前でこみあげてくる尿意と戦う顔を見せた羞恥と安堵で放心状態のようだったが、私に小さな声で「ありがとうございます。」と言った。
奥さん、アンタ、今一番、エエ顔してるでぇ。高ビーなセレブの顔より、今の放心状態のアンタの素の顔の方が綺麗やでぇ、、、
「お天気お姉さん」という漫画に、下剤を仕込まれて生放送のテレビの前で、脱糞してその瞬間に絶頂に達するシーンがあるが、あそこまで我慢して、もう駄目かと思いながら、やっと排泄できた瞬間というのは気持ち良いでしょうね。金持ちも貧乏人も、美人も不細工も、高学歴のエリートも中卒も、セックスして達する瞬間と、排泄する時は平等だ。どんな人間も同じ格好でしゃがみこみ排泄するのだ。素晴らしい。
・・・・・って、その時には、こんなこと考えている余裕は無い。バスの車内で漏らされたら、後始末やら、その後の車内での気まずいムードのフォローやら、大変なんやから!必死で、「お客さん頼むからあと少し我慢して!」と冷や汗もんである。普通にOL生活してたら味わえないスリル満点である。こっちが蒼白になるよ。背後で「漏れる!」とか叫ばれたら。ホント、勘弁して欲しい。マジに。
奥さんっ!!