四月馬鹿
この日ぐらいは、「愛してる」とか「本当はあなたのことが好きで好きでたまらないの」とか、言えるかなと思っていたのだが、言えなかった。
この日なら、あとで、「嘘だよ」と言って逃げられるじゃないか、と。
私が自分から愛してるとか好きだとか言えないのは、鼻で笑われるのが、お前如きが何をいうてるんだとか嘲笑されるのが、怖いのだ。
バカにされるのが、怖い。
怖がりながら、歳だけをとってしまった。
この日ならば、言えるんじゃないかと。
嘘をついていい日ならば、いえるのではと、ズルさを承知で思っていたが、言えない。
そうして、これからも、私は嘘を吐き続ける。
「愛していない」という嘘を。
本当のことを言っても、もうどうにもならないことだから、どうしようもないのだ。本当に、どうにもなりようがないことだから。
そうして、私は嘘をつく。四月馬鹿が終わってからも。