四月馬鹿

hankinren2010-04-02


 この日ぐらいは、「愛してる」とか「本当はあなたのことが好きで好きでたまらないの」とか、言えるかなと思っていたのだが、言えなかった。
 この日なら、あとで、「嘘だよ」と言って逃げられるじゃないか、と。

 私が自分から愛してるとか好きだとか言えないのは、鼻で笑われるのが、お前如きが何をいうてるんだとか嘲笑されるのが、怖いのだ。

 バカにされるのが、怖い。


 怖がりながら、歳だけをとってしまった。

 この日ならば、言えるんじゃないかと。
 嘘をついていい日ならば、いえるのではと、ズルさを承知で思っていたが、言えない。

 そうして、これからも、私は嘘を吐き続ける。
 「愛していない」という嘘を。
 本当のことを言っても、もうどうにもならないことだから、どうしようもないのだ。本当に、どうにもなりようがないことだから。

 そうして、私は嘘をつく。四月馬鹿が終わってからも。








 ☆写真は、知恩寺手作り市にて購入した、風来風雅さんの桜ピアス。