美しい過去など


 以前、「働くマスクお姉さんの職業別エロ事情」というAVのレビューを雑誌に書いたことがあるのですが、今や関西はマスクお姉さんやらマスクオジサンやらだらけでございます。
 はい、私もしっかりしております。もともと喉の保護の為に毎晩マスクをして寝ているのですが、買い溜めしておいて本当に良かったです。もう品切れ状態でいやん。
 お店の店員さん、駅員さんは皆さんマスクしてはります。
 
 日曜日にね、バスガイド仕事の際に、生徒が全員マスク着用の指導されてたのね。ほんで観光地に行くと、マスク修学旅行生だらけで、運転手さんと、「こら、ワシらもしろって言われそうやなー」とか話してたら・・・

 やっぱり某バス会社から出たよ、指示が。
 運転手、ガイドマスク着用って。さすがに車内でマスクで喋るのはどうかと思うけど、そらなんせ学生さん相手やさかい、準備はせなあきまへんなぁ。

 とか言うてたのはまだよくって。


 御存知のように修学旅行はキャンセルが相次いでおります。修学旅行だけじゃない、関西方面への旅行が続々とキャンセル。
 本来ならこの時期は、私は毎日バスに乗ったり、出張したりしている筈なんですが、今は会社で仕事のキャンセルの処理やコース変更などの対応に追われています。
 ぐったりしてしまいました。ふぅ。
 収入激減決定やし。

 社長は完全にキレてて「笑うしかないわー」とホンマに笑ってて、「○百万の損害やー」と叫んでたら、バス会社の人が「うちは○千万の損害ですわー」と電話の向こうで発狂してました。
 神戸方面のバス会社なんか、もう悲惨過ぎて声かけらんない。公休日でも対応の電話に追われてるとか言うてたな。でも飲食店や宿泊関係も大損害でしょうね。
 今日は滋賀県で患者さんが見つかったので、滋賀のバス会社の方が、「うちも全部あきまへんわー」と絶唱しておられました。
 もう、みんな発狂。

 バス乗るより疲れているわたくし・・・

 明日は、仕事終わってから、久々に「プチ贅沢」で、喫茶店に珈琲でも飲みに行こうと思う。1人で、贅沢にゆっくりした時間をちょっとだけでも味わいたい。

 昨年のシートベルト着用、ガイド着席案内も、バスガイドにとって大逆風だったのです。もう「ガイドいらん」ってことになってしまってる。
 この業界、逆風ばっか。
 見事に逆風ばっか。


 しかしですね、そうは言っても、生きていられるので、「どん底」では無いから危機感は無いのです、わたくし個人は。
 昔の方がもっともっと貧乏で不幸だったしね。サラ金の多重債務者だったから!

 「昔は良かった」と、昔の思い出話ばかり書き綴る人や、話す人というのは結構居るけれど、そういうのを読んだり聞いたりしても共感は全く出来ないし、すごく冷めた目で見てしまう。

 そうね、思い出はあなたを傷つけないわね。

 過去は都合良く心に残るよね。

 過去がそんなに良かったら、「現在」は、あなたにとってそんなに嫌なモノなのか。でもそういう「現在」を作ったのはあなたじゃないか、とか。
 それは性格の悪い私の穿った見方なんだろうね。

 私は「昔は良かった」なんて思えない。最悪だったとしか思えない。あの日に帰りたいなんて絶対に思わない。
「美しい過去」なんて物を持たないから。
 学生時代も、二十代の頃も、二度と戻りたくない。昔より今の方が絶対いい。経済状況が悪化してても、失恋しても、仕事のストレスで辛くても、昔より今の方がずっといい。

 私には「美しい過去」は無い。語ることの出来る思い出話が無い。悲惨な話、痛い話、聞く人が不愉快になる話なら、あるけれど。

 私には「美しい過去」は無い。
 「楽しかった思い出」も無い。昔の写真なども一枚も無い。残したくもなかった。
 だけど過去の美しさに酔い、現実を醜いものであるかのように説く人達よりは、幾らか幸福だと思う。そうして身近な人が美しい過去ばかりを幸せそうに語るのを見ると、なんだか哀しくなるのだ。
 私には「美しい過去」は無い。
 私はこの手に未来しか持っていない。
 それで、いい。