all of me


私のすべてをどうして奪ってくれないの?
あなたがいないとダメだってことわかっているでしょ?
あなたにキス出来ない唇なんてもういらないから持って行って!
あなたを抱きしめられない腕なんて用はないから、さあ持って行って!
私の目に涙だけ残して行ってしまうなんてあなたなしでどうやって生きていけばいいの?
私の”心”があったところをあなたは持って行ってしまった
だったらどうして全部持って行ってくれないの!!

              「all of me」






「本日、北京オリンピック開催の中継をテレビで見ることよりも、この場に来てくださったマニアックなお客様方、こんばんわ」
 
 という挨拶で始まりました。
 昨夜は、神戸に元婚約者T君のジャズライブに行ってまいりました。生バンドをバックにしてT君と、もう1人の女性シンガーがスタンダードなジャズナンバーで神戸の夜に酔わせてくれました。T君の歌ったものの中では、シャンソン「枯葉」をジャズにアレンジしたものが良かったです。あと、これはT君が歌ったんじゃないけど「煙が目に染みる」も良かった。

 冒頭の「all of me」、訳詩を読むと悲痛な失恋ソングみたいですが、軽快で好きな歌です。
 私はウディ・アレン「ギター弾きの恋」という、ショーン・ペンサマンサ・モートンの映画が好きなんですが、この映画のサントラに「all of me」が収録されております。「ギター弾きの恋」は、フェリーニ「道」をモチーフにした、男という生き物の野生と甘えのもたらすどうしようもなさと、無垢な女の愛情を描いた映画です。
 いまおかしんじ監督、林由美香さん主演の「たまもの」を観た時に、この上記の二作のことを思い出しました。

 「ギター弾きの恋」のサマンサ・モートン、「道」のジュリエッタ・マシーナ、「たまもの」の林由美香、無垢なる魂の痛々しさと哀しさと美しさ。だけど観終わった後に残るのは、男を愛し痛めつけられる女の痛々しさではなく、愛情を受け止める術を知らぬ男の哀しさと孤独。

 「道」のラストシーンは悲痛。これからこの男は生きていけないのではないかと思えるほどの孤独。地獄のような孤独。

 報われない愛情を抱き追い続ける女より、愛情を受け止める術を知らず女に背を向ける男の方がよっぽど不幸ではないのだろうか。手を伸ばして目の前の人を抱けばいい、それだけの簡単なことなのに。人の愛を受け止められないから、人を愛せないのだ。
 そのことに気づいた時には遅すぎる。

 
 あと、歴史エロコラム「アダルトビデオ調教日記」連載中の今月8日発売のDMM DVDの「今月のイイトコドリ」で、AVのレビューを書かせていただいております。わたくしの顔写真を載せるのは遠慮させていただいて(本業が不特定多数の人の前に出る仕事だから出せねぇんだよ)、代わりに今年の冬に出会った「彼氏」の写真を載せております。

 歴史の勉強になり、とってもタメになる(嘘)「アダルトビデオ調教日記」の方では、今回は豊臣秀吉のことをとりあげております。
 790円で付録にDVDが三本もついており、オカズにもなるんでどんぞ。本誌でヌき、DVDでヌき、と非常に使えます。

 ちなみに元婚約者のT君が先日私の部屋に来た時に、DMM DVDを見せたのですが、非常に興味無さそうに鼻で笑っておりました。女の裸なんで見てもおもしろくないそうです。私は女の裸好きなんだよっ!! これでヌくんだよっ!!彼との間に深くて暗い河の存在を感じました。



おまえと俺との 間には 深くて暗い 川がある
それでもやっぱり 逢いたくて エンヤコラ 今夜も 舟を出す              「黒の舟歌



 さあさ今夜も舟を出そうか、川の向こうの遥か彼方のあなたに逢いにいく舟を。いつになったら辿り着けるか、果てが見えないほどの深くて暗い川だけど、舟を漕ぐ舟を漕ぐ舟を漕ぐ、見えない光に導かれ舟を漕ぐ。辿り着けるかわからない、舟が沈み深い川底に堕ちていくかもしれない、この川を。
 それでも舟を出さずにはいられない。それを業と人は呼ぶのだろうか。


 このところこんな色ボケな世迷言を綴るのも、きっと夏のせい夏のせい。
 夏のせいだから許してください。
 お願い許して、夏のせいにして。