エロ戦士エッチマン 最終回 ―エッチマンよ、永遠に―

 お待たせいたしました・・・
 お待たせしすぎたかもしれません(村西とおる口調で)
 誰も待ってないかもしれません・・・
 もしかしたら忘れられていたのかもしれん・・・

 エッチマンを知らない人は、これを読んでね!

エロ戦士エッチマン参上
エロ戦士エッチマンその2
エロ戦士エッチマンその3
エロ戦士エッチマンその4

 さあっ! 遂に愛と涙のエロヒューマンストーリー「エロ戦士エッチマン」最終回だよっ!!


 蒼井そらは震える手で、兄・カンパニー松尾の撮ったAVをデッキに入れ、リモコンのスタートボタンを押しました。今まで「エッチなもの嫌い!」と軽蔑し続けて避けてきたアダルトビデオを、最愛の兄が他の女とセックスしている映像を見ようとするそら。

 映し出される画面には兄・カンパニー松尾と「生」の女性達のセックスが描かれていました。欲情する女達と交わる兄・・・セックス、セックス、男と女が交わるセックス・・・
 大好きな兄が他の女とカメラの前でセックスをしています。その事実が、そしてそれが映像として記録され商品になっていることがずっとそらは怖かったのです。だから「AV嫌い!」と彼女はAVを軽蔑することによって逃げていたのです。
 カンパニー松尾兄のAVを見て、そらはそれまで自分が怯えていたほどに苦しくなったりはしませんでした。ただ、ひたすら「セックス」に見入っていました。そして自分が何故AVを怖かったのかというと、それは本当は自分が兄とセックスをしたいからだったということにも気付いたのです。

 そらは泣いていました。でも悲しくて泣いているのではありません。ただ兄のセックス、そしてそのセックスをとりまく空気が描かれた「映像」の心地よさと切なさに泣いていたのです。そこに描かれた「空気」は決して自分と違う世界のものではないからこそ、身を浸すことができ、心に染み渡りました。
 泣きながら、そらは自分の股間に指を触れてみました。そうせずにはいられなかったのです。
 触ると気持ちがいい・・・他の誰かに触られるともっと気持ちがいいのかもしれない・・・。そらは兄がセックスする映像を見ながら、生まれて初めて自分の股間をまさぐってその快楽に声をあげました。

 お兄ちゃん・・・オナニーって・・・気持ちいいね・・・

 股間を指でいじりながら、そらの脳裏には二村青年の姿が浮かびました。
 私・・・あの人に、酷いことばっかり言ってた・・・あの人が私のことを好きだってこと、わかってるのに、いっぱいいっぱい傷つけてた・・・私、本当はエッチな女の子なのかもしれない・・・だって・・・今、AV見ながらひとりでエッチなことして・・すごく気持ちいい・・・・だからあの人に・・謝らなきゃ・・・

 翌日、保育園でそらは子供達と戯れていました。そんな彼女にいつもの如く魔の手がっ!! どこからともなく麻縄が飛んできてそらの身体に巻きついて彼女はM女軍団達の手により悪の組織のアジトに拉致されてしまいました。アジトで拘束椅子に座らされ「助けてーーっ!」と泣き叫ぶそら。

 しかしいつもと違うのは、今日そらの目の前にいるのは悪の女ボス「立花里子」ではないのです。サングラスをかけて髭を生やした低音ダミ声・悪の総統「TOHJIRO」がM女軍団達に囲まれてそらの前に立っています。
 今日は何だか雰囲気が違って怖い・・・立花里子さんなら、「んふっ、可愛がってあげる」って感じのニュアンスで私を攻めようとしてたけれども、TOHJIROは・・違う・・・。
 そらは今までにない恐怖を感じて震えました。


TJ蒼井そら〜いっておくが俺は立花里子のように甘くないぞ〜今日お前をさらったのはエッチマンをおびき寄せるためだ〜(低音)あいつの息の根をとめた後で、お前をたっぷり料理してM女軍団の一員にしてやるからな〜(低音)」

蒼井「いやっ! 何をするつもりなのっ!! 怖いっ!!」

TJ「ゲロを吐かせたり〜縛ったり〜肉便器にしたり〜ありとあらゆる陵辱をお前にしてやるから楽しみにしておけ〜(低音)」

蒼井「いやぁぁぁーーーっ! NGなのにぃーーーっ! 助けてーーーっ!!」

「そうはさせないぞっ!!」

 いつもの如くどこからか声がします。現れたな・・・とほくそ笑むTOHJIRO。


「悪のエロあるところに正義のエロあり! 人に性欲がある限りAVは滅びない! エロ戦士エッチマン参上っ!!」

 エッチマンに変身した二村青年が現れました。まんまと罠に嵌りやがって・・と手にした麻縄に力を籠めるTOHJIRO。

TJ「エッチマン〜俺は立花里子と違ってお前に容赦しないぞ〜M女軍団っ!! 行けっ!!」

 M女軍団がエッチマンに襲い掛かります。エッチマンの乳首を徹底的に責めてしかも○○○や×××を△△△するM女軍団達!!

 エッチマンはM女軍団の様子がいつもと違うことに気がつきます。エッチマンに攻撃する隙を与えず全員がまるでTOHJIROの手足のように連携プレーでエッチマンを攻めるのです。
 まずい・・・何故か僕の弱点を全て知られてるような攻め方だ・・・○○○や×××を△△△するなんて・・あっ! 声が出ちゃうっ!! そこっ! そこっ!!


 気持ち良さに思わず感じて声をあげてしまうエッチマン。しかし拘束椅子に縛り付けられて泣いて助けを求めているそらの姿を見て「感じてる場合じゃないっ」と、我に返ります。
 エッチマンは何とかM女軍団を振り切ります。あいつをやっつけないとそらちゃんが陵辱されてしまう・・倒さなければ! とTHOJIROに向かい破壊力抜群の「ふたなりビーム」を頭につけてる変なもの(ち○この張り型)から発射しようとするエッチマン。

 しかしTOHJIROは全く怯む様子がありません。それどころか口元に笑いを浮かべています。

 そしてTOHJIROの口から驚くべき事実がっ!!

TJ「エッチマン、いや、二村ヒトシ〜お前に俺は倒せない〜何故なら俺はお前の実の父親だからだっ!!」


 そう言って、TOHJIROはポケットから一枚の写真を取り出します。そこには二村青年の母と肩を寄せ合うTOHJIROが・・・

ニ村「嘘だっ! そんなのは嘘だっ! 僕の父親は僕が生まれる前に死んだはずだっ!」

TJ「俺はなぁ〜悪の軍団に入りSMで世界を征服する為にお前と子供の出来たお前の母親を捨てたんだ〜」

ニ村「嘘だっ! 本当に僕の父親だというんなら、何か証拠を見せろっ!」

TJ「いいだろう、実の親子だという証拠を見せてやるっ!」

 TOHJIROは服を脱ぎ始めました。そこには二村青年とあまりにもそっくりの立派な乳首がっ! そしてM女軍団達がその乳首を舐め始めると、「あっ! あっ! そこっ!! そこだ〜(低音)」と感じて大声をあげ始めるのですっ!!

ニ村「嘘だっ! 性感帯が同じだからって親子だという証拠にはならないっ! 嘘だっ!」

「エッチマン、残念ながらそれは本当の話だ」と、声がしました。いつのまにか現れた謎の男・松本和彦の声です。


松本「TOHJIROは、お前の実の父親なんだよ・・・・」

ニ村「嘘だっ! 嘘だっ!」

 動揺して怯むエッチマン。その隙を逃してなるものかとTOHJIROのサングラスの下の目がキラリと光りました。

TJ「エッチマンっ! その甘さが命取りだっ!!」

 TOHJIROの一本鞭がエッチマンの頭上に高くあがりました! バラ鞭ならともかく一本鞭は危険ですっ! TOHJIROの鞭がエッチマンを打ち据えようとするその瞬間っ!!

「危ないっ! エッチマンっ!」

 と、どこからか現れた立花里子がエッチマンを抱きすくめるように庇い、TOHJIROの鞭を背に受けました。痛みに悲鳴をあげる里子! 

TJ立花里子〜お前、余計なことしやがって〜(低音)」

 背に傷を受け血を流し倒れる里子。そんな里子を「どうして僕なんかを・・」と抱きしめるエッチマン。
 今度こそエッチマンを打ち据えようと一本鞭を高らかに掲げるTOHJIROを、エッチマンは睨みつけます。

ニ村「許さないっ! 彼女をこんな目に合わすなんてっ! 例えお前が僕の父親だろうが許さないっ!」

 エッチマンは高らかにジャンプをしてTOHJIROにしがみついて剥き出しになったTOHJIROの乳首を嘗め回し始めました。実の親子で性感帯が同じなら、弱点も全く同じ筈だ、、それらどうしたら一番感じるか僕が誰よりもわかっているっ! 「やっ・・やめろっ・・」と、性感帯を攻められまくってTOHJIROが怯んだその一瞬にエッチマンは「必殺!! ふたなりビーム」を浴びさせます。ビームを思い切り受けてしまい倒れ込むTOHJIRO・・・

TJ「・・・うっ・・・二村・・・まさかこの俺がお前の乳首攻めに感じてしまうとは・・・・悔しい・・しかし・・・覚えておけ・・・俺が死んでも・・悪のエロは滅びない・・またどこからか新たな悪のエロが現れてお前の敵になる・・それだけの話だ・・・」

ニ村「・・お父さん・・・」

TJ「最期に・・・父親として、お前に忠告してやろう・・・俺が倒れてももっともっと強いヤツらがお前の元に現れてお前は戦い続けないといけないだろう・・・その時、今のままのお前ではまだ勝てない・・それだけはお前に言っておく・・・エッチマン・・・いや、ヒトシ・・・生き延びたいなら、戦え・・(低音)」

 そう言い残して、TOHJIROは目を閉じました。動かなくなった彼をM女軍団達が取り囲みそのままどこかに消えていきました。

 立花里子は背から血を流したまま苦しみ呻き続けています。「救急車を呼んだからもう少しの我慢だっ!」と、里子の兄・松本和彦と、助け出された蒼井そらとエッチマンが彼女を囲みます。

ニ村「どうして・・・僕の為にこんな傷を・・」

松本「どうしてもくそもあるかよっ!・・・お前、わからねぇのかよっ! 里子の気持ちがっ!」

 松本和彦に怒鳴られて、初めてエッチマンは立花里子が自分を愛してくれていることに気付いたのです・・・


 そのまま里子は病院に入院して手術を受けましたが命には何の別状もありませんでした。二村青年は毎日のように身を挺して自分の命を助けてくれた里子の元へ見舞いに行きます。そして、里子はぽつりぽつりと自分のことなどを彼に話し始めました。幼い頃、家族の元からTOHJIROの手によりさらわれて悪の痴女の訓練を受け続けてきた寂しく辛い日々のことなどを・・それにつられるように二村青年も自分のことを彼女に語り始めました。オナニー三昧でAVが自分の青春だったことなどを・・・

 そこにはかつて敵として戦い続けてきた二人の姿はありませんでした。彼らは不器用で遠回りをしてきた、惹かれあう一組の男女でしかありませんでした。

 ある日、お見舞いに蒼井そらも婚約者の青年弁護士K*WESTと共に病院に訪れました。そら達が病室に入ると、そこには語り合う二村青年と里子だけの穏やかな空気が流れていました。
 その姿を見たそらは、胸にチクっと痛みを覚えました。病室を出て、「そういえば、私まだ二村さんに謝ってない」とそらは気付きましたが、里子と二村青年の姿を見た彼女は、あの空間に引き返す気にはなれませんでした。
 そんなそらの肩をそっと抱き寄せるK*WEST・・・

「エッチマン・・・君はエッチだけど、大した男だぜ」と、K*WESTは呟きます。そして、俯くそらに、こう聞きました。

「そらちゃん、本当は、彼のことを好きだったんじゃないの?」

蒼井「・・・わかんない・・・」

「君は、正直だね」

 と、苦笑するK*WEST。そして彼も、真剣な顔になって、そらにこう言うのでした。

「僕も、正直にならないといけないね。・・あのね、そらちゃん、僕は君にずっと嘘をついていた。AVが嫌いなんて嘘、エッチなこと嫌いってのも、嘘。君に好かれる為に、今まで嘘ついてた。本当は、AVもエッチなことも大好きなんだよ、ごめんね、そらちゃん」

蒼井「・・・私こそ、ごめんなさい・・・私の為に嘘ついてくれてたんですね・・私が嘘つかせてたんですね・・・」


 黙ってそらの肩を抱くK*WEST。彼に身体を預けるようにもたれかかったそらは、ふいに言いました。

蒼井「今から、K*WESTさんの部屋に行っていい?」

「いいけど・・俺、本当はエッチだから、そらちゃんにエッチなことしちゃうかもしれないよ・・それでもいいの・・?」

蒼井「私も、本当はエッチなの。だから、、、部屋に行きたい」

 恥ずかしそうに俯くそらの手を握り、二人はK*WESTの部屋に急ぎます。部屋に入り静かに唇を合わせ抱き合います。そらは胸がドキドキして緊張していました。エッチなことに嫌悪感を抱いてきたそらの初めてのセックスです。しかしそれ以上にK*WESTも緊張していました。大丈夫かな・・勃つかな・・怯むなっ! 俺っ! 大好きなそらちゃんとやっとセックスできるんだから、たっぷりと彼女を可愛がって愛してやるぜっ! フリーになった新生K*WESTの本領を発揮してやるぜっ!!! 頑張れ俺っ!!

そうしてベッドに倒れこむ二人・・・

(注・当初は事細かにこの2人のセックスシーンをたっぷり描くつもりやったんですが、実際にそうしようとすると非常に恥ずかしくなってきましたんで(赤面)皆さんの想像におまかせいたしますっ! すんげぇいやらしいセックスシーンを皆様方各自でご想像下さいっ!! 妄想の参考までに、蒼井そらのサイトhttp://www.aoisola.net/ K*WEST様のお部屋・動画も見られるよっ!http://www.dogma.co.jp/modules/tinyd2/index.php?id=24ごめんなさいごめんなさい・・・)

 その日から、2人のひたすらやりまくる日々が始まり、そらはセックスの喜びに目覚めるのです・・・



 ある日、久々に二村青年がラーメン屋「中ダシ」に行くと、そこには虚無僧のような格好をして旅支度をした市原オヤジと、ジョギングの途中に立ち寄った東良美季がいました。

ニ村「オヤジ、どうしたんだよ、その格好は?」

市原「おうっ! ええとこに来よったのうっ! お前にも挨拶行かなアカン思っとったんやっ! ワシはしばらく旅に出て店あけるんでなぁっ!」

ニ村「旅って、、いつ帰ってくるんだよ」

市原「ははははっ! それはワシにもわからんなぁ! 風吹かば吹け、雨降らば降れで流されて気のむくままに彷徨うつもりやからなぁ! 明日帰ってくるかも知らんが、永遠に帰って来ないかも知らん」

ニ村「永遠って・・・何言ってんだよ、オヤジ。オヤジのラーメンが食べられないのは寂しいんだよ・・オヤジの問題発言聞きたくてここに来てる人達はいっぱいいるんだからさぁ」

市原「嬉しいこと言ってくれるやないかっ! やけどなぁ、時にどうしても孤独な場所へ自分を持っていかなアカン種類の人間がおるんや。その為に、旅に出るんや・・・ワシの人生は、風に吹かれて雨に降られてずっと旅してるようなもんやからなぁ」

ニ村「オヤジがいない間、この店はどうなるんだよ?」

市原「銀次がおるやないかぁ! あと、新しい若いモンも入ったでぇっ! 平本っ! 挨拶せんかぇっ!」

 店の奥から、爽やかに平本一穂さんが顔を出しました。

平本「はじめましてっ! 平本一穂と言いますっ! あ、俺のオリジナルメニューの『兄貴ラーメン』もよろしくお願いします!」

ニ村「どこかで見たことがあると思ったら、この辺にちょくちょく出入りしてた佐川急便のセールスドライバーの平本さん・・」

市原「ワシがスカウトしたんやぁっ! 銀次の『体臭ラーメン』『加齢ラーメン』だけやったら濃すぎて客層が偏ってしまうさかいなぁっ!」

銀次「オヤジっ! 加齢とか言うけど実は平本さんの方が俺より年上なんだってばっ!」
 

市原「銀次、平本、後はまかしたでぇ。ワシのおらん間に、この店潰したら帰ってきた時にどつきまわしたるからなぁっ! ほな、行くわ」

二村「オヤジ・・・絶対に帰って来いよ・・・待ってるから・・・」

 市原オヤジは何も言わず、ただ微笑みながら旅立っていきました。その後姿を見ながら東良美季は二村青年に言いました。


東良「そう言えば、森下くるみちゃんから結婚式の知らせが来てたよ」

 そう言って、彼は一枚の葉書を二村青年に見せました。そこにはウェディングドレス姿で幸せそうに微笑むくるみと彼女の夫になったカンパニー松尾の姿がありました。

東良「僕が撮った引退作の中の彼女が、最高に綺麗だと思ってたんだけど、、この写真の中の彼女には叶わないな」

 と、笑う東良美季。

二村「くるみちゃん・・本当に幸せそうな顔してる、良かった」

東良「彼女は、幸せになろうと想い続けることを諦めなかったから、幸せになれたんじゃないかな」

二村「幸せになろうと想い続けることを、諦めない・・・」

東良「僕は彼女と一緒に仕事をしてきて、彼女が泣いたとこも見てるし、辛い想いをしているところも見ていて、何もしてあげられることの出来ない自分にもどかしさを感じたこともあったけれども・・でも、彼女は自分の足で歩いて自分の道を歩いていける強さのある娘だったから、自分の力で幸せを掴んだと思うんだ。女って、凄いよ。見習わないとな、我々男共も」

二村「そうですね・・・本当に・・・」

 その時二村青年の脳裏に浮かんだのは、森下くるみの顔ではなく、蒼井そらの顔でもなく、身を挺して自分を助けて傷を負ってしまった立花里子の顔でした。

 自分の力で幸せを掴めるように・・・強く・・・


 
 ビデオ屋に帰り店番をしている二村青年のもとへ、「こんばんわ」と、一人の少女が訪ねてきました。

二村「あ、君は・・TOHJIROのM女軍団の・・」

星月「星月まゆら、です。そのせつはどうも」

 自分が倒した父・TOHJIRO率いるM女軍団の一人、星月まゆらhttp://blog.livedoor.jp/mayura55/がぺこりと頭を下げました。そして彼女は見覚えのあるサングラスを差し出しました。

星月「これ・・以前から、TOHJIRO監督が、自分に何かあった時はこのサングラスを形見としてあなたに渡して欲しいって言ってたんです」

 星月まゆらは、サングラスを二村青年に手渡しました。

二村「ありがとう、わざわざ持ってきてくれて。ところであれから君達はどうしてるの?」

 まゆらはにっこりと微笑んでこう言いました。

星月「何も変わらないわ・・・TOHJIRO様は、星になって今も私達の心の中で輝き続けているから・・・何も変わらない・・・」

 そう言うと、まゆらは風のように素早く店を出ていきました。その存在は夢だったんではないかと思わせるように一瞬で姿を消しました。
 だけどまゆらの来訪が夢ではない証拠に、二村青年に手にはTOHJIROの形見のサングラスがあります。

 二村青年は、父・TOHJIROの形見のサングラスをかけて鏡の前に立ちました。そして、鏡に向って思いっきり声を低くして「二村〜」と物真似をしてみました。

二村「似てない・・・相当似てない・・・」


 さて、そのうちに立花里子は病院を退院しましたが、彼女は傷の後遺症の治療の為に空気の良い北海道の保養施設に一年間滞在することを二村青年に告げました。里子が北海道に旅立つ日、空港まで二村青年が見送りに来ました。飛行機の出発の時間が近づいてきます。病院で2人だけの時間を何時間も過ごし語り合い続けた里子と二村青年でしたが、お互いが自分の本当の気持ちについては何も口にしないままでした。

里子「見送りにきてくれて、本当にありがとう・・・じゃあ、私、行くね」

二村「・・・一年後には、戻ってくるんだよね」

里子「・・戻ってくるわ、必ず。そしてあなたに会いに行く。悪の女ボスとしてではなく、立花里子という一人の女として、あなたに会いにいく」

 目に涙を浮かべる里子を、二村青年は強く抱きしめました。

二村「一年後、あなたが帰ってくる時には、あなたを守れるぐらい強い男になっているから・・・エッチマンに変身した時だけ強くなれる男じゃなく、ちゃんと1人の男として強くなりたい。僕は自分の甘さと弱さであなたに傷を負わせてしまった、自分の命を捨てようとしてまで僕を助けてくれたあなたを、今度は僕が守る番だから・・だから、必ず戻ってきて欲しい・・・そして、その時には、あなたとセックスしたい。エロ戦士エッチマンと、悪の女ボスとの戦いのようなセックスではなく、ただの男と女が、愛し合うためにするいやらしいセックスを、あなたとしたい」

 そう言って、二村青年と立花里子は人目を憚ることなく抱き合って唇を合わせました。何度も何度もキスをしました。本当は里子に行かないでくれと二村青年は言いたかったのです。けれども今の彼は言えませんでした。里子にもそれはわかっていました。愛してるとも好きともお互い言えずに、「一年後に戻ってくる」と、当てのない約束の言葉を交わすことで精一杯でした。

 飛行機のゲートの向こうに去っていく里子を見送りながら、一年後、彼女が戻ってくる頃には僕はどうなっているのだろかと二村青年はぼんやりと考えていました。


 (これより一年後、セックスに目覚めた蒼井そらが街でスカウトされてAV女優になり、それを追うようにK*WESTも弁護士の職を捨てAV監督になり、男優としては全く将来性が無いので「加藤鷹のようになる」という夢を捨てて二村青年がAV監督になるという運命が待ち受けているのですが、その話は、またいつの日か・・・)


 里子が乗った飛行機が遠い空の向こうに飛び去っていき、遂には見えなくなりました。二村青年の胸は、寂しさで締め付けられるように痛みました。それでもその痛みは彼の心を暗くさせる種類の痛みではありません。
 今まで味わったことのない痛みではあるけれども、それはまるで古い表皮の下から新しい皮膚が顔を覗かせ、生まれて初めて浴びる太陽の光の熱に触れたような生命の息吹を感じさせる種類の痛みでした。

 二村青年は、夕陽を背に受けて駆け出しました。
 孤独という痛みを背負いながらビデオ屋に向って走り出しました。
 「生き延びたいのなら、戦え」という父・TOHJIROの残した言葉を何度も思い浮かべながら、照りつける太陽の熱に焦がれそうになりながら、エッチマン・二村青年は走りました。
 これから陽が沈み夜となり、そしてまた明日陽が昇り、それが永遠に繰り返されるだろう。終わらない日々の中で僕はただ、未来を信じて生きていくしかない、戦いの日々の中で、生き延びていくしかない―

 AVに囲まれた、あの空間を目指してエッチマンはひたすら走りました。今夜はどのAVでヌこうかと、終わらない日々の中で確かに喜びを得られる「オナニー」のことを考えながら彼は走りました。
 ただ、ひたすら、走り続けました。

 
 エッチマンよ、どこへ行く。
 この世に性欲というものが存在する限り、人はオナニーをし続け、セックスを求める。
 だから、アダルトビデオは滅びない。
 
 エッチマンは、戦い続ける。

 そして、彼はあなたの街にもいるのです。
 性欲がある限り、オナニーがある限り、セックスがある限り、エッチマンは存在し続けるのですから。


 もしかしたら、あなた自身が「エッチマン」なのかもしれません。



               
                エロ戦士エッチマン       第一部・完




 エロビデオを愛する全ての人達と、私をヌかせてくれた全てのエロビデオに感謝と愛を籠めて。
             
                          藩 金蓮