愛の言葉は関西弁で

 数年前に発売された「大阪ソウルバラード」という曲集がある。
http://www.jvcmusic.co.jp/-/Discographylist2/00058.html阪神の川藤がホロリと涙するCMも印象深かった。誰がどう聞いても大阪の匂い漂う歌ばかりだ。「やっぱ好きやねん」「悲しい色やね」「大阪で生まれた女」「お前が好きやねん」「心斎橋に星が降る」「時代おくれ」「ハートスランプ二人ぼっち探偵ナイトスクープのテーマソング)」などなど。



 最初は、仕事で使おうと思って購入した。例えば地方から大阪に観光に来たお客さんを乗せた時とかの雰囲気作りに流すとか。そう思いつつ大阪って実際あんまり観光するとこじゃないので未使用のままだが、うつらうつらと聞いてみると、このコテコテの大阪ワールドが、なかなかいい。



 自分が関西にしか住んだことがなくて慣れているのもあるけど、関西弁っていいっすね。ついでにいうと私は地元の方言と京都弁がミックスされていて、怒ると何故か汚い下品な関西弁になってしまう。ネイティブの京都弁なら、もっと美しく喋られるのに。



女の子の関西弁って随分きつく聞こえるという説もある。確かに「なんやねん!」とか「めちゃめちゃわらかすわー」とか「アホちゃうか」とか、聞く人によってはきっつい喋りやしなぁ。関西人は怖いっていう人多いし、関西嫌いって人も結構いる。一口に関西って言っても、京都・大阪・神戸、それから和歌山奈良滋賀と、随分カラーは違うんだけどね。


 ちなみに私は大阪と神戸には、住む気がしません。嫌いじゃないんだけど、なんとな〜く。



 参考までに、島田紳助上岡龍太郎(上岡師匠が初体験した連れ込み旅館は桃色旅館という旅館で、現在ホテルピーチパイっていうラブホになってます。三条木屋町。)は京都人。ダウンタウン兵庫県尼崎市(何故か私の友達の尼崎人は、ボケばかりです。それも相当な)。明石家さんまは和歌山生まれ、現在実家は奈良です。


 
 関西弁慣れしてるからなのか、団鬼六先生、鶴光師匠、はたまた市原克也(AV監督)さんの影響なのか、私がエロシーンを書くと、絶対にこれになってしまう。



「奥さん、、奥さんのチューリップ花開いとるでぇ、、春やなぁ、、、。」


「奥さん、奥さんのここ梅雨入りしとるでぇ、、。ぐちょぐちょやわぁ。」



 このパターン以外書けないんです、、、、、、




 あと、愛の言葉も関西弁がいいですなぁ。これも慣れてるせいかな。「好きです」とか「とても好きだ」とか言われるより、言うより、これっすよ。



 『めっちゃ好きやで♪』

 あるいは、

 『めちゃめちゃ好きやで☆』


 きゃーっ!
 これが、めっちゃ好きやねんとかまでいくとと、ちょっとしらじらしく思えるけど。ところで「好きやねん」ってインスタントラーメン、私は凄く美味しいと思うんだけど関西限定って勿体ないと思う。


 ラーメンの話は置いといて、上記のセリフ、面と向って言われたことないな、あ、あったかも知れないけど、その時はこっちが相手のことをあんまり好きじゃなくて、相手も雰囲気で言ってるだけだなというのがわかってしまってたりとか。この人、状況に酔ってるだけだなーとか冷静に考えながら聞いてしまっていたり。




 自分自身は「好き」って、ポジティブな状況で、あーんまり言ったことがない。
 相手を引き止めて縋る時だったり、相手の気持ちが離れてるの知ってて自分の気持ちを訴えようとする時だったり、相手を試す時だったり、あと「俺のこと好き?」って聞かれて、言わなければいけない状況だったり。これは逆もありきだけど。(別に好きでもないとか思ってても言えねぇよな。友達で自分に気がある男に「俺のことどう思ってる?」って聞かれて「セフレ!」って正直に答えて男を怒らした娘がいる)



 好き、って言ってしまうと、負けのような気がしてたから。白旗あげてしまうようで、弱味を握られてしまうようで、上下関係が出来て、自分が下になってしまうようで。でも、そうやって自分が勝手に卑屈に上下関係を作ってしまってたんだろうなとも思う。



 「好き」っていう最もシンプルな感情の言葉を自分で自分が難しくしてしまって駆け引きにしか使わなかったりしてしまっていることを思うと、ヘタレだよなぁ、と思った。それでもこの言葉は怖い。ただの文字の羅列ではないから。簡単には言えない。セックスするより、口に出すのは勇気がいる。
 セックスしたいとか、キスしたいって言うより勇気のいる言葉だ。




この世で一番、シンプルな感情なのに。どうして余計なことを考えてしまうのか。相手を試す時にしか使わないのか。「私のこと好き?」って、おそるおそる相手の顔色を伺う時とかしか、自己愛の確認の手段として相手に口に出させる時しか。


 口に出してしまうと、その言葉に縛られてしまいそうで怖い、重く思われて離れてしまわれるのが怖い、戻れなくなるのが怖い、逃げ場がなくなるのが怖い。
 大事なのは相手の気持ちを試したり確かめたりするより、自分の気持ちのハズなのに。相手が自分をどう思おうが、自分が相手をどう思うかということの方が大事なハズなのに。

  
「私のこと好きですか?」


 と、問いかけて、相手が無言になってしまったことがある。わかっていたけれども確かめらずにはいられなかったのだ。そしてその問いかけを発したことにより関係は完全に終わった。
 でも、好きという嘘をつかれ続けるよりは良かったのかもしれない。



 好きと言うことに比べて、キスやセックスを誘うことのなんと容易いことか。相手と向き合い、目をきちんと見て「好き」と口にすることのなんて難しいことか。それができる人には、かなわないと思う。そしてそんなふうに相手から言われても、言葉を返せずに目を逸らしてしまう。



 本来は、それが先だったハズだ。したいから好きとか、したから好きじゃなくて、好きだからしたいということの方が。私はあなたが好きだという気持ちが一番大事で先に来るべきなのに。



 自分から好きだと言ったら負けだから、相手に言わせるようにしむけるべきという人も居る。恋愛は駆け引きだと。確かにそういう部分はあるかも知れないけど、なんだかもうそういうのもまどろっこしいし、言わせることに必死になって自分の気持ちの置き所が疎かになってしまったりするのが果たして恋愛なのだろうか。




 そうじゃなくて、肝心なのは、自分の気持ちのハズだ。一番大切なのは。先がどうなるかとか、迷惑じゃないかとか、負けるのが嫌だとか、そんなことよりも。



 面と向って「好き」ということなんて、照れ臭くて多分一生言えねぇと思ってしまうけど、それもアカンと思う。だって、言われないのも嫌だから。言わなくてもわかるやろって言うのは、気持ちが通じ合っているんじゃなくて怠惰なだけだ。別々の人間なんだから気持ちが通じ合って言葉を使わなくてもわかりあえているなんてありえない。言葉を発するなんて、シンプルで簡単なことができないというのは、ただ怠惰で自分のことしか考えてないだけだ。保身に必死になっているだけだ。



 好きな人に、好きと言えないなんて。とってもシンプルで大切な感情なのに、それを口に出せないなんて。きっと、いつか後悔する。

 ストレートな愛の言葉が言えなくても、それならせめて照れ隠しに関西弁で、



 奥さん、めっちゃ好きやでぇ
 奥さん、めちゃめちゃ好きやでぇ




 奥さん、とか付けてる時点で、ヘタレだよなぁ!
 関西弁なら、照れ隠しをしながらもストレートで、そのくせなんだか柔らかい愛の言葉が口に出せるかも。




 めっちゃ好きやで
 めちゃめちゃ好きやで〜
 好きじゃボケぇえ〜っ!!
 好きや言うとるやないか、このタコ!
 私はあなたのこと、めちゃめちゃ好きなんじゃっ! アホっ!
 






***(使用上のご注意)***
 関西人以外の方が上記のセリフをご使用になりますと時と場合と、その人のキャラによっては「さむっ! あんた寒いでぇっ!」と言われることがありますので、ご注意を。相手が「・・・もう・・・アホやなぁ・・・」「・・・アホかいな、お前・・・」と恥ずかしそうに返してきたら、それは「わしも(うちも)好きやでぇ」という意味です。「どれぐらい、うちのこと好き?」と聞かれたら、「アホほど!」と返してあげるのもいいかもしれません。