「名前のない女たち」DVD発売しました。
私は東京という街が苦手だ。
きっと知らないだけで、いいところもたくさんあるのだろう。いつか好きになれるのかもしれない。けれど、今は、とても苦手で怖い。
自分を受け入れてくれないどころか、拒んでいる場所のような気がしてならない。
東京という街に一人でいると、とてつもなく不安になる。それは人の波に呑まれていく不安でもある。自分と言う人間が大勢の中の一人に過ぎないという不安――そんなことはわかりきっていることだし、どの街でもそうに決まっているんだけれども、東京では特に感じる。
人の波に揉まれ呑み込まれ流されいつのまにか消えて、最初から存在していないものであるかのような錯覚にとらわれる。
私は東京が苦手だ。いつまでたっても。いつになっても。
怖い場所だ。
先日、所用で上京の際、山手線に乗って渋谷付近を通過する際に、あの場所を見つけた。
建物の間に小さな川があり、そこだけセピア色になっているかのように暗い。都会の隙間に垣間見えた「現実」のように暗い、あの場所。
映画「名前のない女たち」で、主人公ルルを乗せた小船が漂うあの場所を、電車の中から見つけた。
もしも、私が大学を京都ではなく東京で選んでいたら。
18歳から東京で始まる人生というものが私にあったならば。
自分はどうなっていただろう、そんなことを、よく考える。東京で生きる自分の人生――そこに浮かぶのは華やかで楽しい暖色系の「青春」ではなく、あの渋谷で見つけたセピア色の都会の隙間のような光景だ。暗い蒼を湛える景色。
けれど、「青春」なんて、そんなもんじゃないか。
もしも私が明るく楽しい青春生活を謳歌していたのならば、今頃は「あの頃は良かったのに・・・」なんて昔を語りながら今を愚痴る「終わってる」オバさんになっていたかもしれない。
青春なんて、暗くてみっともなくて愚かでバカで救いようがなくて――それで、よかったじゃないか。
今だから思えることだけれども。
中村淳彦さん原作の企画AV女優インタビュー集を原作とした映画「名前のない女たち」がDVDになりました。
DVDにはメイキング風景や原作者インタビューなどの特典映像もついています。
まだご覧になっていない方は、是非どうぞ。ひりひりと身に染みる、青春映画です。
この映画について、原作に登場する元AV女優・桜一菜ちゃんがブログに書いていた文章が、以下です。
↓
あの頃、中村さんに取材されて良かった。
あの世界で呼吸ができたから。
2010年に映画を観れて良かった。
この世界で前を向けそうだから。
カラダを売って生きた事を誇りには思わない。
思えないのでなく思わない。
きっと思わなくていい。
だけど、それも私なのだと認めよう。
何をやっても私は空っぽだ。
それも認めよう。
ちょっと満たして、なくなったらまた満たして生きればいい。
空っぽでも本気で寂しくなんてないんだから。
苦しいから痛めつけるのに余計に苦しかった。
でも私以上に君は苦しんで傷ついてた。
AV嬢って肩書きにしがみつく事で生きていた。
情けないけど、それしか生きる方法がなかった。
そんな事を君も良くわかってた。
今なら私も君の事がわかる。
わかり過ぎて泣いた。
ルルのおかげで言えた「ごめんね」があるんです。
桜ちゃんブログhttp://sakuraxxxlog.blog70.fc2.com/
私の「名前のない女たち」評http://d.hatena.ne.jp/hankinren/20101011#p1
ちくわ夫人こと、緑川夫人の「名前のない女たち」評
http://ameblo.jp/midorikawa777/entry-10696051961.html
いつか、私は、東京に拒まれなくなるのだろうか。
「怖い」という気持ちを持たずに、一人で歩ける日が来るのだろうか。
今はまだ、東京が、怖い。
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- 発売日: 2011/02/04
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☆原作本。「藩金蓮」名義で解説書かせてもらってます。
名前のない女たち最終章?セックスと自殺のあいだで (宝島SUGOI文庫)
- 作者: 中村淳彦
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2010/09/07
- メディア: 文庫
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