由美香ママ

 明日、21日に六本木での「監督失格」最終日、最終回(21時半〜)上映前に、平野勝之監督と、由美香ママこと小栗冨美代さんがご挨拶に登壇されるそうです。

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 由美香さんの思い出の地、六本木での最後の上映に、監督失格をご覧になった方も、まだの方も、是非お越しください。
 由美香ママに、会いに来てください。この映画を観に来てくださった皆様の顔を見て、とても喜ばれると思います。

監督失格」は、当初「由美香ママ」というタイトル案もあったそうです。この映画をご覧になった方はおわかりいただけると思いますが、これは、監督と女優の物語であり、男と女の宿命の物語であり、そして何よりも、親子の物語です。

監督失格」のHPのテキストの由美香さんの弟さんの書かれた文章に詳しいですが、幼い頃、離婚して出て行った母親に娘はずっと「捨てられた」想いを抱いて憎んでいました。高校に入ったばかりの娘は父にも離婚を期に捨てられ、大都会で一人で生きていかねばならず、アパートを借りるために処女を売ります。水商売で自活し必死で生きてきた娘は母親と再会します。
 近づきたくても「捨てられた」という想いが邪魔をして、上手くいかない母と娘。それでも年月を経て、必死に抱き合おうと手を伸ばしあう、母と娘。
「由美香」の中で、北海道から由美香さんがお母さんに泣きながら電話する場面があります。(「監督失格」にも使われています)過酷な自転車旅行でストレスがたまり精神が追い詰められた由美香さんが、平野監督に、

「電話したい」

「誰に?」

「ママ」

 そうして由美香さんはお母さんに電話して、「疲れた。ママの声、聞きたかった」と泣き、お母さんに励まされます。
「由美香」だけ観ていたら、仲の良い親子だなと思っていたのですが、今回、弟の秀行さんの書かれたものを読んで、そんな単純なものではなく、その後も2人の間には越えられない傷や戦いの日々が続いていたのだということを知りました。
 そうして、やっと伸ばした手が繋がりかけた時――娘は、ある日、突然に世を去るのです。
 連絡がとれない由美香さんの元に向かう平野監督と由美香ママ。
 彼女の部屋の鍵を開けて中に入る。
 「ようやくお前、幸せになれるはずだったのに」
 ママはそう絶叫します。亡くなる少し前、由美香さんは結婚を考えた恋人と別れていました。
「結婚して子供を産んで、幸せな家庭を築くのが夢」
 そう、唱え続けた一人の女性の死。
 女の死から逃れられない、一人の映画監督。


 残酷にも、それらが全てカメラに収まっています。そして作られた映画が「監督失格」です。
 「監督失格」の上映自体は、まだまだ続きます。
 けれど、この作品の真の主役である、由美香ママに、是非、会いに来てください。

 ところで、由美香ママは「野方ホープ」という有名ラーメンチェーン店の社長です。私は関西在住なんで知らなかったし食べたこと無かったんで、この前、先月、東京に行ったときに初めて食べました。すごく美味しかった。

 あと、今、発売中の「自転車人」に、平野監督が、由美香さんと、元の奥さんとの、「奇妙な関係」について書かれています。確かに「不倫」だし、「夫の浮気を許す妻」という存在は不可解な方はいらっしゃるかもしれませんけど、その辺のこともこちらに書いてあります。
 私も「不倫」は良くないと思っているんだが、そうなってしまう感情そのものを否定しちゃったら、この世の芸術のほとんどは生まれてこなかったはず。自分が小説書いてからつくづく思うけど、物語は「不条理」から生まれるから。

自転車人 (別冊山と溪谷)

自転車人 (別冊山と溪谷)