爪と目・ホテルローヤル
第149回芥川賞を藤野可織さんが、直木賞を桜木紫乃さんがそれぞれ受賞されました。
藤野さんとは怪談イベントで知り合い、私が連載しているメンズナウのコラムにも登場していたきました。
桜木さんは、昨年出版した「寂花の雫」に解説を書いてくださり、対談もさせていただきました。
ふたりが受賞すればいいなーとか言っていたのですが、まさか本当に、ふたりともが受賞されるなんて驚き、感激しました。
知り合いだからというだけではなく、私は藤野さんの作品も桜木さんの作品もすごく好きで、おふたりを作家として尊敬しています。たとえ知り合いだろうが、「いい人」だろうが、作品がつまらなくて評価できなければ、賞なんてとって欲しくない。
でもこのふたりは、生み出す作品も素晴らしいし、何よりも小説に対して真摯で謙虚で誠実に、全身全霊を注ぎ込んでやってこられた方だと思っています。
桜木さんの本は全て読んでいますし、藤野さんの作品は単行本になっていないのもほとんど読んでいます。
今回、おふたりの受賞で嬉しかったのは、私が信じているものがこうして評価され、自分まで報われたような気になったからです。
小説は売れないと、言われていますし、実際にそうです。
私の周りも、小説を読まない人だらけです。
私の名前だって、誰も知りません。
そのくせ、小説家になって本が少しばかり売れて、嫌なことやつらいことも押し寄せてきて、やっとられんと思ったこともありました。
小説家というだけで「印税長者」なんて言われてしまうことがありますけど、実際になってみて、小説だけで食えている人なんてほとんどいないこと、重版でもかからない限りもうかる仕事ではないことや、本を出し続けることの難しさを目の当たりにしました。
何年も小説家であり続けること自体が、簡単なことではないです。
他の人はどうかしらないけど、私は小説書くことって、楽じゃないです。
しんどくて逃げ出したいとしょっちゅう思っています。
それでも書き終えたとき、本になったとき、読んだ人が喜んでくれたときの幸福感は半端ないし、それなしでは生きてはいけないと今は思ってるから、やめない。いえ、やめられないんです。
藤野さんも桜木さんも、デビューされてから、決してとんとん拍子でやってこられたわけではありません。
桜木さんは賞を受賞されてから最初の本が出るまでに、5年かかったそうです。
それでも彼女たちは、何年も小説を書き続けてきたし、そうしないと生きていられない種類の方たちだと思っています。
私はこの世にあるものの中で小説が一番好きだし、小説で人生を変えられました。
小説がないと生きていけないと思うし、今でもできるだけ小説を読みたいと思っています。
小説を読む時間が、一番楽しい。
そんな素晴らしい小説に、自分がこうして関われていることは、なんて幸せなことだろうと思います。
藤野さんと桜木さんという「ほんまもん」の人たちが、こうして受賞され評価されたということは、私にとっては希望であり、自分が小説を書き続けることの未来を与えられたような気がしました。
芥川賞受賞作「爪と目」、直木賞受賞作「ホテルローヤル」、どちらも好きな作品です。
是非、読んでください。
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補足***
あるスポーツ新聞系のニュースのサイトで、藤野可織さんの旦那様が編集者だと書かれていますが、これは完全な誤情報です。
学生時代に知り合われた方で、全く出版とは関係がない職種です。(具体的にどんなお仕事されてるかも私は知ってるので断言できます)