寂花の雫


 8月4日に実業之日本社様より新刊「寂花の雫」(じゃっかのしずく)発売されます。
 小説の単著は、「花祀り」に続いて2冊目です。
 文庫でお値段は560円になります。
 解説は昨年「ラブレス」で直木賞候補になった桜木紫乃さんに書いていただきました。

 平家物語のラストシーン「大原御幸」の舞台でもある、静かな山里・大原が舞台です。
 古くからこの地は、世を離れた人々の隠遁の場所でした。
 夫を亡くした未亡人・平本珠子は、大原で小さな民宿を営んで、そこに訪れる人たちとの物語です。
 タイトルの「寂」は、大原寂光院と、そのまま「寂しさ」をかけています。
 「寂」と「性」を描いたお話です。

 登場人物の名前は、平家物語に登場する人物からいただいているのが多いので、平家物語がお好きな方は気づかれるかも。
 あと、大原のお店や、お寺がたくさん出てきますので、京都のガイドブックにもなります。
 大原じゃないけど、四条木屋町の閉店した洋食屋「コロナ」や、今は無き河原町の阪急百貨店のこともちょっといれたりしています。

 
 8月6日発売の「ダ・ヴィンチ」(メディアファクトリー)で、新刊インタビューが、
 8月11日発売の「月刊J-novel」(実業之日本社)にて、解説を書いてくださった桜木紫乃さんとの対談が掲載される予定です。
 こちらのほうは、また近づきましたら改めて告知を。


 

寂花の雫 (実業之日本社文庫)

寂花の雫 (実業之日本社文庫)




 昨日、本屋で別冊太陽の山田風太郎特集を見つけて狂喜した。
  もちろん即、購入。
  高校の偉大なる先輩であり、大好きな作家。
  私が以前使っていた「藩金蓮」というペンネームは、山田風太郎の「妖異金瓶梅」の極悪ヒロインからお借りしたものです。
  山田風太郎デビューは遅いです。30歳を過ぎて、借金のために実家に強制送還させられて、うちの田舎は車がないと仕事が出来ないので、日本海近くの某所で合宿免許を取りに行っていた時のこと。合宿所はヤンキーばかりで、うんざりで、とにかく娯楽――本に飢えていて、小さな本屋で「くのいち忍法帖」を購入しました。その時に、なんとなく面白いなと思って、地元の図書館で「妖異金瓶梅」を借りて読んだら……生まれてはじめてぐらいの大興奮。
 それまでも本が好きで読んではいたけれど、「小説って、こんなにもおもしろいのかっ!!」と全身に雷が落ちたような衝撃でした。
 あのラストシーンを超える小説は、未だに読んでいない。

 地元の高校(当時は旧姓中学)出身の作家なので、図書館には絶版になったものや貴重な山田風太郎作品がたくさんありました。
 当時、私は人生で最悪の時期で、若くもないし金もないし男にだまされるわサラ金地獄が親にバレるわ仕事ないわ……そんな時に、むさぼるように読みふけりました。
 小説って、こんなにおもしろいのか、小説ほどおもしろいものはない! 今に至るまでそう思うようになったのは、この時の山田風太郎との出会いです。

 いつも「好きな作家」を聞かれると、山田風太郎団鬼六司馬遼太郎坂口安吾と、この4人の名前をあげています。

 別冊太陽の山田風太郎特集は、まだ読みかけなのですが……風太郎の父親の故郷は私の実家の近くで、風太郎の叔母さんの家なども徒歩圏内です。またこの本を読んで、風太郎の関宮時代での6年生の担任が、うちの母を教えていたという事実が発覚しました。あと、名簿を見たら、うちの実家の主治医の先生は、風太郎と豊岡中学時代の同級生だったようです。

 うちの高校(兵庫県立豊岡高校)卒業の小説家は、山田風太郎と、私……あと、今東光さんが中退されてます。
 山田風太郎は不良で停学3回くらってるし、今東光さんは素行不良で放校(だから名簿に載ってない)という……。
 母と話をしてたら、母(母も同じ高校。うちの妹も弟も皆同じ)が


「うちの高校出身の小説家は、素行が悪い人ばっかりやなぁ」 


 と……。

 お母さん、あなたの娘も……。