いいところも悪いところも含めて君の全てが好きだよ、と


「平成の寺田屋騒動」のニュースhttp://www.j-cast.com/2008/09/05026320.html


 私は、坂本龍馬をこよなく愛す者なので、このニュースはがっくりよ。寺田屋には何度か行ってるけど、おりょうさんが、龍馬を助けるために裸で駆け上がった階段や、寺田屋事件の刀傷、弾痕とか「当時のモノ」だと思い込んでたし、「関係者の間では立て替えられたのは周知の事実」なんて記事も見たけど、一般の「ファン」は、当時の建物そのまんまやと思っているやろう。

 他にも某有名料亭やら、いろいろ「観光偽装」疑惑はあがっておるようですわ。
 伝えられている歴史なんて、どこまでが「真実」かわからない。つーか、無いと思った方がいいけど、それにしても、寺田屋は「証拠」として、刀傷や弾痕を「売り」にしてたんだから、正直、「いままで騙されてたの?」感がある。


 さてさて。

 「騙す」と言えば、私も昔、「嘘を吐く仕事」をやって金を貰っておりました。
 20代の頃、サラ金に借金があったから、昼間に仕事をしていて、その仕事の就労時間が不規則だったために、「好きな時間に好きなだけ働ける」副業をしておりました。
 テレクラのサクラです。

 声を変えて、キャラクターを使い分けて、いかに「話を引き伸ばすか」が、お仕事です。電話の向こうの男性は、ほとんど目的は「会って、エッチ(この言い方は苦手ですが、こう表現する人は多い)すること」なのですが、サクラからしたら、「会わずに話を引き伸ばす」が、稼ぐためのテクニックなのです。
 
 マニュアルみたいなのもあって、「年齢を聞かれた時のために、干支一覧表を用意しておく」とか、「テレフォンエッチを求められた時は、ヨーグルトをスプーンで掻きまわして『音』を聞かせる」、など。
 ホントに、「干支」を聞いてくる人は多かったです。しかし執拗に、「ホントに24歳? 嘘でしょ? どうせサクラなんでしょ?」とネチネチ言ってくる人も多くて、私はサクラやけど、マジにかけてる女が聞いたら不愉快にしかならねぇぞと、毎度思いました。
 あと、「ヨーグルト」云々ですが、「テレフォンエッチ」の時に、「ホントに濡れてる? 濡れてる音聞かせて」と、ほとんどの人が聞いてきます。だから、この小道具が必要なのです。

 男の人も、「サクラでもいい」と承知してる人もたくさんいました。そらそうか。会う目的ではなくて、寂しいから話し相手が欲しいと、延々と話だけって人もいたし、自分の趣味や性癖を語りたがる人とかもいた。
 
 私もしばらく年齢と職業と声を使い分けて、毎晩朝方まで頑張ってはいたんですが、非常に精神的に疲れるお仕事でした。実際にテレクラで会ったことは無いです。何故なら、その頃は、軽蔑してたから、テレクラに電話をかける人を。今は、テレクラや出会い系や風俗に「何か」を求める人と、自分との間に相違は無いと思うし、性的に何かを(性欲という言葉だけに治まらないものを)激しく渇望しない人は、自分とは遠い、わかりあえない人だと思うことすらある。
 例えば、「セックスしたい」という欲望には、入れたい、入れられたい、だけじゃないモノがある。もっと何か、生命の根源から溢れずにいられないような、性的な渇望。
 私はアダルトビデオを見るのだけれども、AVがただの「排泄の道具」なら、ここまで惹かれない。だって、AVを見なくてもオナニーは出来るし、実際、世の中にはAVを見ない人の方が多い。だけど、AVを必要とする人には、「性の排泄の道具」に治まらない、性、すなわち生の渇望の何かがあると思う。
 

 それはともかく、そうやって「嘘を吐く仕事」でお金を貰っていたのですよ。そんな仕事はよくあることで、例えばこの前、逮捕されたAV女優さんだってそうだけど、年齢、出身地を「嘘」を吐いているAV女優さんだってたくさんいるでしょう。水商売やってる人だって、「嘘」を吐いて、お客さんの気をひく人だってたくさんいるでしょう。
 「夢を見せる」と言うと、綺麗事のようだけれども、「女」という性を買う人に対しては、その人達が求める商品になるために「嘘」を吐かないといけないことはある。

 それはいいのですが。
 素人が、それをやっちゃうのはどうかと思うのです。
 昔、私は一度だけ、「合コン」というモノに参加しました。大学入りたての頃です。同じ学科の娘を誘って参加しました。その娘は、一浪して、私より一つ上の19歳でした。さてさて、合コンが始まって、「君達いくつー?」と聞かれた時に、彼女は「あたし、18さーい!」と迷いもなく言い放つので、私は隣で、露骨に驚いてしまいました。

 いえ、年齢の一つぐらいサバよんでもいいじゃないか、と今なら思うのですが、当時は、エライそれがショックやったのです。友達が、「男に気にいられるために嘘を吐く女」に、その場で「変身」したことがショックで未だにそのことを覚えているぐらいですから。
 彼女は、もしその中の一人と付き合うことになったら、どうするのだろう? と思いました。付き合いだしてから、「ごめん、私、嘘吐いててん。実は浪人してて、19歳やねん」と告白するんかなぁ、とか。

 いえね、こんなことを思うのは、女性誌の特集記事の見出しなどを見てて、たまに暗ぁ〜い気分になることがあるからです。「モテメイク」とか「モテ服」とか、「セクシーな女になる」「小悪魔な女になる」とか、恋愛の技術! みたいなことが、あたかも恋愛そのものみたいに語られているのを見るとねぇ。本屋の「女性向け」本のコーナーのタイトル見ても、うんざり。
 「美しくなる」「いい女」になる向上心は必要だけど、「恋愛の技術」を磨いて、「いい男」をつかまえることが出来るのでしょうか?

 以前、「おはよう朝日」(関西ローカル)で、モテメイク、モテ服について特集してて、リポーターが、大阪の街行く女の子に、それについてどう思う? って聞いた時、その中の一人が、こう言ってました。

「でもなー、モテメイクやモテ服で、ホイホイ引っかかるような男なんて、アホやで!」

 ぷぷっ。
 同意。逆に、男が「女はこれで喜ぶでしょ!」みたいな台詞連発したり、いかにも女が喜びそうな店しか行かないとかやったら、醒めるよなぁ。


 男は、そんなバカじゃないと思うよ。
 「技術」に惑わされるバカな男もおるけど、バカな男なんて相手せんでええやん。技術磨いて「モテる」ことよりも、誰か1人をちゃんと好きになることの方が重要やないの?
 ちゃんとって言うのは、相手のことを、ちゃんと見てってこと。相手を1人の人間として、自分と違う1人の人間として尊重するってこと。

 私は他の人には嘘を吐いても、好きな人には嘘を吐きたくないし、今までしてきた悪いことも、出来たら受け止めて欲しい。過去も未来も今も全て受け止めて欲しいと願うのは、わがままな欲望なのだろうか。だけど、私も相手の過去も未来も今も全て受け止めたい。全部含めての、その人であり、私であるのだから。すごくいろんなことを求めて、求められたいと思っている。やっぱりわがままな欲望なのかもしれない。過去も未来も、そして、私のいいところも悪いところも全部知っておいて欲しい。その上で、いいところも悪いところも含めて、君の全部が好きだから、と言って欲しい。私も言いたい。君が、僕を、知ってると、言われたいし、言いたい。

『君が僕を知ってる』



 いいところも悪いところも過去も未来も含めて、君の全てが好きだよと言われたい。
 今まで私がしてきた悪いことや愚かなことも許して欲しい。

 真実って、残酷だけど。