ブサイクな恋
恋をすると綺麗になるというけれど、私はどんどんブサイクになる。人として、どんどんブサイクでみっともなくなる。
嫉妬、猜疑、依存、一方的で無責任な甘え、そんなマイナスの感情が抑えても抑えても溢れ出し、どんどん嫌な女になり、どんどん自分が嫌いになる。
なんでそういう嫌な部分が、あふれ出すのか。
要するに、弱くなるから。
恋をすると鎧と仮面を剥がされて、剥きだしの裸の自分がその人の前で曝け出されてしまう。
なんて、嫌なヤツなんだろうと自己嫌悪に陥り、辟易する。
こんなはずじゃなかったのに、私はもっとちゃんと、うまくやれるはずだったのに。好かれたいから、嫌われたくないから、嫌な女になりたくはないのに。
だけど、どんどんと弱くなり、どんどんと嫌な女になる。
本当は、あなたを笑わせて楽しませたいのに。甘えて泣いて嫉妬して迷惑かけて、なんてうざい女なんだろう。自分が男だったら、絶対いらねぇ、こんな女は。
あなたに、優しくしたいのに。
優しくされたいと、求めてばかりいて、あなたを傷つけて痛めつけてしまう自分がいる。そうしてまた、自己嫌悪の穴に落ち、さらにブサイクになる。
独りで生きていくんだと、独りで生きていかないといけないと、そう思って鎧を固めて武器を肌身離さずに構えていた頃は、こんなベタベタ女々しい女が一番嫌いだった。
人を好きになると、弱くなる。そして寂しくなる。独りで生きられないと知ってしまったから、私は昔より、今の方が、ずっと寂しい人間になった。
弱くて寂しくて、これから先もこんな寂しいままだと、生きていけないんじゃないかと思うこともある。
弱いと、自分の身を守ることばかり考えて、人に優しくすることを忘れてしまう。他の人はいいけれど、優しくするべき人にすら、忘れてしまう。どうして、ちゃんと愛せないのだろう。優しく、愛せないのだろう。ただ、泣いて縋るだけの、ウザイ、ガキのような自分を、どんどん嫌いになる。
どんどん、どんどん嫌いになって、恋をする自分を消してしまいたいと思うこともある。もう一度、独りで生きていこうとしていた頃に戻りたいと思うけれども、今はもう、戻れない。
弱い人間は、自分の身を守るためにズルくなる。
そうして、さらに嫌な女になる。自分ではコントロールできない感情の揺れ動き、それが恋愛感情というヤツだから、私は私の思う自分になれなくて、どんどんとそこから離れて嫌なヤツになっていくので混乱し、悲しい。好きになって、ごめんなさい、なんて思うべきじゃないのに。
弱くて寂しくてブサイクで、最低の女。うざすぎる。
だけど人間というものは、弱くて寂しい生き物だということも知っている。だから私は、あなたの弱くて寂しいところが、好きで、愛おしいと思う。
あなたの弱さと寂しさのどうしようもなさを愛しているから、私も私の弱さと寂しさとどうしようもないブサイクさを愛することができたらいいのに。